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山口は様々な景色が撮影できる場所 「サバイバルファミリー」矢口史靖監督インタビュー

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2017年2月11日、宇部市や山口市などで撮影された映画「サバイバルファミリー」が全国公開された。プロモーションで来県した矢口史靖監督に、県内ロケでの裏話や同作の見所などについて話を聞いた。(聞き手/山口宇部経済新聞 札本咲子)

--映画「サバイバルファミリー」の完成、おめでとうございます。

ありがとうございます。

--まず、全国をロケハンされた中で山口をロケ地に選ばれた理由を聞かせてください。

今回の撮影は、一番に道路のことがありました。「山口宇部道路」を高速道路のシーンの撮影で貸していただけるということから話が始まり、「宇部湾岸道路」のワイヤーのスケール感がものすごく、迫力が出せる上に撮影もしやすいということでロケ地になりました。

--実際に撮影されてみていかがでしたか。

道路の広さとしては東京の方が広いですが、カメラワークによっては東京と似たような感じに撮れたり、空しか見えないようにも撮れるんです。なので、劇中のあらゆるシーンに「山口」を散りばめました。

--宇部の街の印象などを聞かせてください。

印象的だったのは、当たり前の景色の中に野外彫刻がたくさんあったことです。そんな光景がうらやましかったですし、景色の中に溶け込んでいて、とてもかっこいいと感じました。

地元の方にとっては日常的になりすぎている光景かもしれませんが、それはそれで彫刻の意義を果たしていると思います。ほかの街ではちょっと見られない風景ですよね。

--劇中に「SLやまぐち号」が登場しますが、ロケ地を決める際に、山口にSLが走っていることも大きかったのでしょうか。

山口にSLが走っていると知ったのは、身内の子どもが「SLやまぐち号」のプラレールで遊んでいたことがきっかけでした。山口について知っていく中で、ストーリーの中でぜひ使おうということになったのです。電気がなくてもSLは走ることができますからね。

2015年の夏、シナリオを書く前に実は何度か乗車したのですが、トンネルに入るときにSLは窓を閉めますよね。ですが、わざと窓を開けて「トンネルの中で煙が入って顔についたらどのくらい黒くなるのか」を実験しました(笑)。車掌さんには「閉めてください」と怒られましたけどね。乗客の方には車内で煙たい思いをさせてしまったなぁと(笑)。

--実際に顔は黒くなりましたか。

思ったほど真っ黒にはならなかったですが、顔は結構汚れましたよ(笑)。

--道路の話とSLの話の2つが重なって「ロケ地は山口」と決められたのですね。

そうですね。特に、全国津々浦々を探しても「高速道路に見える道路」でかつ「封鎖して撮影できる場所」って実は無いのです。合成の映像では迫力を伝えられないと思っていて、それはしたくありませんでしたので。

--そうだったのですね。道路の封鎖は大変ではありませんでしたか。

特に思い出があるのは「山口宇部道路」です。道路の封鎖は山口県警さんにお願いしたのですが、スタッフにお願いに行かせたところ「どこまで本気でやりたいのか知りたい」と伝言をもらい、私が直談判に行きました。「これだけ需要なシーンで、ここじゃないとダメなんだ」と熱意を伝えたところ、決定権を持つ警部さんにその場でOKをいただくことができました。

これは後日談ですが、その方は退職を控えておられて映画のための道路封鎖の仕事が警察官人生最後の仕事だったということを聞き、とても感慨深いものがありましたね。理解をしていただいてとてもありがたかったです。

--「山口宇部道路」で実際に撮影されてみていかがでしたか。

私がこれまでに手掛けてきた撮影の中でも、それはもう「ありえない」撮影でした。大掛かりでもありましたし、なんでこんなことができるのか・・・と興奮しながら、不思議な気持ちでしたね。

--「ありえない」というのは、どのようなことがでしょうか。

映画の撮影で「道路の封鎖」と言うと大体は嫌がられるんですよ。ですが、山口県警さんに協力していただいて心強かったですし、皆さんとても協力的でした。

交通量が多い道路を封鎖できて、そのシーンを取り終わったときに「この映画はイケるぞ!」と確信しました。おかげさまでスケール感のある目玉シーンに仕上がりました。

--宇部をはじめとする山口県内での撮影はどうでしたか。

とてもやりやすかったですよ。都会に見えるシーンも撮れるし、田舎のシーンも撮影できる。下関の角島でもロケを行ったのですが、あそこは南国にも見えますよね。どっちを向いても様々な景色があることがとても良かったです。

地元のエキストラの方々もとても協力的でした。「どんなシーンか」「どんな役か」など、こちらが伝えたことをすぐに理解してくださってスムーズに撮影ができたので助かりました。

そうそう、これはキャストの小日向文世さんからの伝言なのですが、「カツラは役柄で被っていたことを地元の方に伝えておいてほしい!」ということでした。メークさんがカツラを整えているのを見たエキストラの方が驚いていたらしいです(笑)。

--おもしろいエピソードですね。宇部では、映画撮影のロケを誘致しようと関連団体が動いているのですが、実際に撮影された監督のご経験から、宇部や山口に対して「これをもっとPRしたらいい」など、今後の誘致活動のためのご意見を聞かせてください。

この映画をチャンスにしてほしいと思います。「サバイバルファミリー」は映画の半分を山口県で撮影していますし、山口県内でのロケの3分の1を宇部で行っています。これほどの物量を山口や宇部で撮影できることを知ってほしいですね。

山口宇部空港があって、飛行機もあれば、SLもあれば、美しい海岸もある。いろいろな立地があることをぜひPRしていただきたいと思います。

--地元の人たちに向けて、映画の見どころを一言お願いします。

地元の人にしか分からない「ここ知ってる」という発見があると思います。映画のストーリーにハラハラドキドキしてもらいながら、地元の人の特権を楽しんでもらえたらと思います。

--映画のヒットを祈念しております。ありがとうございました。

はい。ありがとうございました。

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