
セミナー「技術コミュニティーが企業にもたらす価値とは-通信技術の世界の現状とこれからの予想-」が6月12日、山口大学工学部(宇部市常盤台2)で開催された。
宇部市と山口大学工学部、宇部工業高等専門学校が協定を結び、地域で活躍するイノベーション人材の育成と地元定着を目的に実施する「地域リーディング・イノベーター講座2025」の一環。当日は同学工学部の学生ら約50人が参加した。
講師の佐藤祥子さんは宇部市出身。ベンチャー企業のフロントエンジニアや「LINE(現・LINEヤフー)」のデベロッパーサクセス(開発者支援)チームでのエンジニア組織のテックブランディングや技術カンファレンスの運営などを担当し、2024年3月にはデベロッパーリレーションズ(企業と開発者が良好な関係性を構築するための活動)のサポート事業を行う「THE BIGLE」(東京都小金井市)を創業した。
佐藤さんは「5月に登壇した、きしだなおきさんや石原直樹さんと知り合いで、登壇しないかと声をかけられたことがきっかけ。以前から地元・宇部の若者に、これまでの自分の経験や地方ではなかなか触れられないITの情報などを伝えたいと考えていたので、ありがたい機会だった」と話す。
セミナーでは、技術開発者による「技術コミュニティー」の企業への参画について、背景にある歴史や文化、ソフトウエアを通じた社会貢献や思想などを解説したほか、企業がコミュニティーに関わることで得られる価値や個人としての関わり方などについても語り、これからキャリアを築こうとする学生たちに向け、その重要性を呼びかけた。
佐藤さんは「さまざまな事情から29歳くらいの頃に上京したが、それまで市民団体『宇部未来会議』で活動するなど地元を盛り上げたいという思いを持っていた。東京で10年以上頑張って成果を出してきたことを地元に持ち帰り、貢献したいとの思いがあった。地方と都市部では教育やキャリアの作り方が全く異なる中、宇部にずっと居続けたいと思っている人たちが情報格差で置いていかれないように、ITを活用して選択肢を増やすことができれば」と話す。
「今回のセミナーをきっかけに、聞いてくれた人たちの中でソフトウエアエンジニアとしての就職という選択肢が生まれるかもしれない。東京の学生であれば自然に耳に入ってくる情報も、地方では何かしらのきっかけがなければなかなか入ってこない。今後はこちらでも活動しながら、そうした現状を変えたりコネクションになってあげたりすることができれば」とも。