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レノファ山口、2019前半戦を振り返る。地元メディアに聞く「後半戦の展望と注目選手」Vol.1

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 山口県内全19市町をホームタウンとするレノファ山口FCは今季、「ORANGE SOUL 山口を魂で染め上げろ」をチームスローガンに掲げてJ2リーグ4年目を戦っている。

 2019シーズンは開幕から勝点を積み上げられず、一時はJ3自動降格圏内の21位まで順位を落としたが、6月を5試合負けなしで乗り切り、リーグ前半戦を15位で折り返した。

 

 いよいよ、J2リーグは後半戦に突入。レノファの練習や試合を間近で取材する地元メディアに「前半戦の総括」「後半戦の展望と注目選手」などを聞いた。

【設問1】前半戦を振り返って
【設問2】印象に残った試合やベストゴール、取材中のできごと
【設問3】後半戦で期待したいこと、楽しみなこと

 

吉永 達哉 ―Yoshinaga Tatsuya―
フリーMC。レノファのスタジアムDJは今季で12シーズン目。毎年恒例の「ファン感謝祭」でも司会を担当する。ホーム戦だけでなくアウェイ戦も現地で取材し、テレビ山口(tys)で毎週金曜深夜放送の「RENOFA SQUARE」は、撮影から編集まですべて自身が行い、こだわって制作している。


――1、前半戦を振り返って
新旧の選手の融合に時間が掛かり、2019バージョンの霜田サッカーの浸透が遅くなったなというのは感じますね。霜田サッカーの理解度「10」が満点だとすると、「9」の選手もいるけれど、「4」の選手もいるという、そのズレがピッチの中の乱れに繋がったのかな、と。不安を抱えながらやっている選手が多かったんだろうなと思います。自分たちなりにやっているつもりだけど、自分たちのサッカーができているかというとそうじゃないし、結果も出ないし、理解しているつもりだけどおかしいなという、そういう疑心暗鬼みたいな感じだったのでしょうね。

6月に入ってからは、3バックに変わったことも当然あるんでしょうけど、役割がハッキリしてきたなというところですね。本当は今のような躍動感を4バックで出したかったんでしょうけど、それがなかなか難しかったので、適材適所もあるでしょうけど、それが見事にはまっちゃったので、選手たちからすると目の前の霧が少し晴れたというか、「これでいいんだ」と納得してピッチに立っているんじゃないかと思います。

――2、印象に残った試合やベストゴール、取材中のできごと
ベストゴールは、横浜FC戦(第17節)の吉濱遼平選手の直接フリーキックです。レノファがJ2に上がってから直接フリーキックが決まったことはなかったので、そのレア感ももちろんそうですけど、あの土壇場で、あのプレッシャーがかかる状況の中で、よくぞ振り抜いたな、と。あそこはやっぱり選手の質が高くないと、まぐれでは絶対に決まらないので、素晴らしいフリーキックでしたね。あのゴールで、元々レノファが持っている「あと5分あれば何とかなるんじゃないか」という空気も思い出させてくれました。

それから、菊池流帆選手へのインタビューも印象に残っています。彼の純粋さや、プロになり切れていない弱さや脆さ、見た目と内側の相反するものも感じたし、単純に「かわいいな、この選手」と思ったのも菊池選手でした。迷ったけれど、あのインタビューは放送してよかったなと思っています(第11節・金沢戦は菊池選手のクリアミスで失点し、0-2で敗戦。試合直後の番組用インタビューで菊池選手は堪えきれず涙した)。ただ、あの印象だけが番組の視聴者に印象づけられているので、早めにいつもの菊池選手を見せてあげたい、泣いているイメージを払拭してあげたいなと思って、それでなるべく早めに、今季は菊池選手のインタビューを2回放送しています。

――3、後半戦で期待したいこと、楽しみなこと
とにかく走ることと、サポーターに伝わるプレーをしてほしいです。それがないと多分観客動員数は増えないし、見ている人が「負けても次も見に行こう」と思うのはそこだと思うので、観客を呼ぶプレーをしてほしいです。

県民の関心度がストンと落ち着いちゃった感じがあるんですよね。J3に上がった頃からずっと右肩上がりで、関心度自体はどんどん上がっていたと思うんですけど、ちょっと落ち着いたなと思います。それを昨年の低迷した時期ぐらいに感じていたというか……。落ち着いてしまうと「どうしようかな。行こうかな」と思っている人は「やめとこうか」という雰囲気になるので、誘い水になっていないんですよね。ここで何が必要かというと、例えばこれから続く上位とのホーム戦で勝つことと、4連勝や5連勝というキーワードがメディアに載るような、そういったことも必要でしょうし、そういうことがないと多分もう一度グッとはならないのかなと思います。今後のプラス材料は、お盆に天皇杯(8月14日)があること。ここが一つの起爆剤にならないかなと思っています。ここでセレッソ大阪(J1)に勝てれば、関心度は少し上がるのかなと思いますけどね。

▼後半戦は"佐藤健太郎選手、瀬川和樹選手、高井和馬選手、岸田和人選手"に注目!

1人か、待てよー(笑)。僕の中で今挙がっているのは3人なんですけど、1人は佐藤健太郎選手なんですよ。佐藤選手がコンスタントに試合に出続けられるコンディションを維持して、攻守のバランスを取れる、「落ち着きの錨(いかり)」になってくれるかどうか。そういうことができるのは佐藤選手以外にいないので。

あとは瀬川和樹選手と高井和馬選手です。瀬川選手がどれだけ上下動をやるか。あの運動量とフィジカル、左からのクロスはなかなか他にはないので、瀬川選手がどれだけ頑張ってくれるか。あとは高井選手がいかに調子に乗ってブレイクするか、ですね。

そして、レノファ最古参の岸田和人選手も。前線で労をいとわない動きはチームメイトを鼓舞しているでしょうし、彼がピッチにいると場内も沸き、何かをやってくれる期待が高まります。怪我でまだ本調子ではないけど、これから疲れが溜まり、暑さも堪える季節、彼なら躍動してくれるはずです。

 

楢﨑 瑞 ―Narasaki Rui―
山口朝日放送(yab)アナウンサー。2015年から「みんなのレノファ」のMC兼ディレクターを担当。試合の振り返り、選手のパーソナルに迫る独自映像、サッカー解説者が生出演する「解説コーナー」など、サッカーファン以外にもわかりやすく情報を伝える。


――1、前半戦を振り返って
ドライな言い方になるけど、理想を追うことと、目の前で起きているサッカーとの乖離というか、それを知ることができた前半戦だったなとちょっと思います。霜田正浩監督の理想の形はすごくハッキリしているけど、リーグごとの特色がある中でJ2に守備のブロックを敷くチームが多いのは、やはりなるべくしてなっていて、そうやっていかないと生きていけないから。でも、霜田監督はそこに風穴を開けようとしている。僕たちからすれば貫いてほしいと思うし、それができればいいなと思うけど、できないからJ2っぽいサッカーになるチームも多いわけです。もちろんJ2のサッカーに染まることが悪いとは全く思わないけど、現実を見て、J2サッカーにシフトしていくのか、それとも理想を貫いていくのか。今はその分岐点なんじゃないかな、と思います。

それは革新的なクラブなら必ず通る道だと思うし、決して暗い話ではないんですよ。うちもJ3から1年でステップアップして、J2・1年目に旋風を起こして、2年目に地獄を見て、みんな体験することを一つ一つ体験してきました。山口の街もサポーターも、メディアも初めての経験なんだけど、みんなが必ず通る道で、今そのうちの一つとして、霜田監督が掲げる理想のサッカーと、実際に今戦うJ2で起きている現実の乖離を見せつけられている。それがわかったし、ここからどう舵を切っていくのかがすごく大事になるなと。単なる1年の後半戦ではなくて、これからのレノファを占うような後半戦になるんじゃないかと思います。

個人的にはこのまま突き進めばいいと思う。ただ、J3に落ちてはいけないから、そこのバランスの取り方は指揮官としては難しいだろうなと思います。

――2、印象に残った試合やベストゴール、取材中のできごと
印象的だったのは第2節の甲府戦(レノファが2-5で敗戦)。あの日はyabのテレビ中継があって、僕はピッチサイドレポーターだったのでピッチレベルで試合を見ていました。ズタボロになっていく様子も見えたけれど、悪いものも全部出たと思えたし、その中で山下敬大選手(甲府戦で2得点)という光が見えました。

でも一番は試合が終わったあとのできごと。甲府戦は山田元気選手のミスからの失点をしたんですが、彼は試合後のミックスゾーン(取材エリア)に勇気をもって来て、メディアの質問にちゃんと答えた。その姿を見て、辛い時でもしっかりと受け入れようとする勇気と強さを感じましたし、メディアはこういった姿勢を伝えないとダメだなと思いました。試合の結果を伝えるだけなら、SNSで誰でもできる時代だから、「こういう姿を伝えないといけない」とメディアのあり方を考えた試合でもありました。

それから、やっぱり岸田和人選手(レノファ最古参のストライカー)がゴールを決めてくれた時(第14節の東京V戦)は違いますよね。その試合で良い結果は出なかったけど、やはりあのゴールがベストゴールです。

――3、後半戦で期待したいこと、楽しみなこと
この時期だからこそ、この状態だからこその、ベテラン勢の逆襲を期待したいです。なかなか勝ちに行けない前半戦だったし、特に若手の起用が目立ったけど、佐藤健太郎選手の存在感は増していて、彼がいるといないでは大違いですよね。そういう選手の逆襲に期待したいです。それが若手に背中を見せることになるし、彼らは若手を育成するためにいるのではなく、人生をかけてやっているわけだから。そこのし烈な争いが見られるようになれば……、悩ましいですよね、どの選手を使うべきか。

佐藤選手はとにかくかゆいところに手が届く選手で、空いたスペースを埋めてくれるし、安全装置になってくれている。それに坪井慶介選手(最年長の元日本代表)が走っているだけで、何だかうれしいじゃないですか。そういうのを求めて試合を見に来る人もいるんですよね。結果や内容が素晴らしいことも良いことだけど、ピッチでプレーするだけで元気を与えられる選手って、みんなそれぞれにいると思うんです、サポーターって。そういう姿をまた見たいですし、我々もそこに隠されている思いをみんなに伝えたいと思います。

▼後半戦は"佐藤健太郎選手"に注目!

佐藤選手です。もう、そこでしょう。彼がどれだけプレーを見せて、どれだけ若手が彼のプレーを見るか。佐藤選手が空いているスペースに顔を出してくれることによって、前線が無駄に走らなくて済む部分もあるし、ダブルボランチなら三幸秀稔選手が自由に動ける部分も出てくるだろうし、守備面で余計な心配をする必要がなくなって、バランスがよくなりますよね。佐藤選手は記者会見でもあえてネガティブなことを言わない人で、そういう人こそ今必要だと思います。ブレないというか、自分が今何をすべきかを常に考えている人。だからこそ、今頼りたいですね。心身共に落ち着きを与えてくれる人だからこそですよね。

 

松原 純 ―Matsubara Jun―
山口宇部経済新聞の記者として街ネタを取材し、サッカー専門新聞「エルゴラッソ」レノファ担当としてチームの取材活動にも勤しむ。昨年11月からは、地元・山陽小野田市のコミュニティーFM「サンサンきらら」で毎週木曜放送の「まるっとレノファ」ナビゲーターを務める。


――1、前半戦を振り返って
ある程度やりたい攻撃ができても最後に決め切れないとか、ゴールは決められたけど自分たちのミスで失点して負けるとか、何か一つうまくいき始めれば調子が上向きそうな予感はするんだけど、思ったより時間がかかってしまったような。チームの雰囲気が悪いわけではなかったので、あまり不安には思っていませんでしたけど、さすがに21位になった時はヒヤッとしました。

6月からようやく勝てるようになってきて、システム変更も一つの要因だと思いますが、霜田正浩監督を筆頭に、みんなが諦めず自分たちのサッカーを信じてやってきた結果が現れてきたんじゃないかと思います。見ているだけでも疲れるほどの練習に毎日取り組んでいる、その努力が実ってきたようにも感じています。

経験の少ない若い選手は何人も苦い思いをしたけど、そのぶん精神的にも技術的にも大きく成長する過程が見られました。楠本卓海選手も菊池流帆選手も、開幕前とは表情が違いますし、それから前貴之選手。昨季までは周りの選手に積極的に話しかけるタイプじゃなかったのに、今季は自分からアドバイスしに行ったり、後輩に頼られたり。多分本人は副キャプテンの役割を強く意識してないだろうけど、自然と「らしく」なっている様子をうれしく思いました。

――2、印象に残った試合やベストゴール、取材中のできごと
長崎戦(第8節)の先制点は爽快すぎて、その時の歓声とか、青い空とか、そういうのも含めて記憶に残ってますね。前選手が外から中に向かって走っていって、きれいに相手の裏に抜け出してからのシュート。あの時は長崎ゴール寄りの場所で見ていたので、この角度から決めるなんてさすがだと感動しました。高井和馬選手の追加点もよかったし、あれで勝ち切れなかったことが本当に残念でしたね。

取材している時に印象的だったことは、ラジオで放送するために選手に「オススメソング」を聞いてる時のできごと。高井選手にも好きな曲を聞いたあとに何気なく「車の中で歌うんですか?」と質問したら、「え、もしかして知ってるんですか?」とギョッとした顔をされました。実は、車で熱唱している姿をチームメイトに動画で撮られたことがあったらしくて、その動画を見られたのかと慌てたみたいです。言わなければわからなかったのに、何だかんだで自らそのエピソードを詳しく明かしちゃう辺りが、おちゃめですよね(笑)。ちなみにオススメソングは、サザンオールスターズの「涙のキッス」でした。「ファン感謝祭」でぜひ歌ってほしい。

――3、後半戦で期待したいこと、楽しみなこと
順位が浮上してきたとはいえ、まだ15位(第21節終了時点)。シビアな後半戦が始まりますが、選手たちは最終節までにどんな成長を遂げて、どこまでレノファは強くなれるのか。霜田監督は開幕前から「若い選手を鍛えてチームを強くする」といった発言をしていましたよね。実際に前半戦だけで、いろんな選手の成長が見られたけど、まだ道半ばならここから21試合、中堅選手もベテラン選手も含めてどんな風に進化していくのか、楽しみです。

▼後半戦は"吉濱遼平選手"に注目!

3月半ばから5試合勝ちなしになった時期に、吉濱選手が「しんどい時こそみんなでやろうぜ」とか、練習で周りに呼びかけ始めた姿が印象的でした。ムードメーカーが数人いる中で、吉濱選手はガツンと喝を入れてくれるタイプ。悪いムードを変える力があると思うので、もし後半戦でうまくいかない時期がやってきたとしても、仲間を巻き込んで乗り越えてくれるんじゃないかと。もちろんパンチのある左足シュートにも期待しています。そして、前半戦で一番多くシュートを放った高井選手も。後半は得点量産に期待しているし、強気な「高井節」も楽しみです。

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