山口県内全19市町をホームタウンとするレノファ山口FCは今季、「ORANGE SOUL 山口を魂で染め上げろ」をチームスローガンに掲げてJ2リーグ4年目を戦っている。
2019シーズンは開幕から勝点を積み上げられず、一時はJ3自動降格圏内の21位まで順位を落としたが、6月を5試合負けなしで乗り切り、リーグ前半戦を15位で折り返した。
いよいよ、J2リーグは後半戦に突入。レノファの練習や試合を間近で取材する地元メディアに「前半戦の総括」「後半戦の展望と注目選手」などを聞いた。
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【設問1】前半戦を振り返って
【設問2】印象に残った試合やベストゴール、取材中のできごと
【設問3】後半戦で期待したいこと、楽しみなこと
竹重 雅則 ―Takeshige Masanori―
KRY山口放送アナウンサー。平日朝のラジオ帯番組「おはようKRY」を担当し、毎週金曜は番組内コーナー「週末版ジャンプアップレノファ」で選手や監督、スタッフのインタビューを放送。ブログ「竹重雅則のお暇なら来てよね」でも、試合内容や感想を丁寧につづっている。ラーメン大好き。
――1、前半戦を振り返って
正直2年前の悪夢がよぎりましたね(2017年のレノファはJ2自動降格圏内に低迷し、シーズン途中に監督交代。最終節にようやくJ2残留が決まった)。2年前は心のどこかで降格はしないと思っていたんですが、最後の最後までどうなるかわからなかった。今季は、3月中旬からの5試合勝ちなしの時期に、2年前のようになったらどうしようというトラウマがよぎりました。
なので、よく持ち直したなというのが正直なところですね。琉球戦で追いつかれて引き分けて、その次は徳島に逆転されて負けて、その後は長崎に追いつかれて引き分けて、ここで21位まで順位が落ちたんですけど、この辺でちょっとトラウマがよぎりましたね。で、鹿児島戦も何だかんだいって勝ったけれど危なかったでしょう。鹿児島で負けたら今季はヤバイと思っていたんですよ。ところが菊池流帆選手のシュートが入って勝った。それで「もしかして」となりました。まだ油断はできないけれど、やれやれ、ほっとしたという感じでした。ホーム初勝利でしたしね。
――2、印象に残った試合やベストゴール、取材中のできごと
前半戦のベストゴールは、月並みで申し訳ないんですけど、横浜FC戦(第17節)の吉濱遼平選手の直接フリーキック。あれが入っていなければ今季はまだ低空飛行だったんじゃないかなと思います。直接フリーキックを決められると相手はガクッとくるので、すごいダメージなんですよ。あれが大きかったんじゃないかなと僕は思いました。もし、あの直接フリーキックが入ってなかったら、6月の勝敗はたぶん逆になっていたんじゃないかな。それくらいあのゴールは大きかったです。
今季は、週一回のペースで練習を取材していますけど、この1カ月くらいで声出し役が増えましたよね。以前は声を出す選手といえば、三幸秀稔選手、高木大輔選手くらいだったかなと思うんですけど、吉濱選手も結構言い始めているな、と。仲良しのグループは確実にあると思うので、それが勝てていなかった頃には固まっていたのが、徐々にチーム全体に広がっている感じがしなくはないです。先日、佐藤健太郎選手にインタビューした時に、「自分が走れないのをわかってか、いろんなチームメイトが労いの声をかけてくれています」みたいなことを言っていて、佐藤選手がそうやってイジられるぐらいに、声を出す選手が増えているんだろうなと思いました。
練習の取材で、周南市から山陽小野田市まで行っていますが、帰り道に山陽小野田市内や宇部市内のラーメンを食べて帰れるので、それも楽しみではあるんですよ。以前はなかなか食べに来ることができなかったけど、その口実にもなって助かっています(笑)。
――3、後半戦で期待したいこと、楽しみなこと
いつ[4-3-3](開幕時のフォーメーション)に戻すのかなという期待というか、気にはなっています。今は[3-4-3]がハマっていて、瀬川和樹選手なんかは全く変わりましたからね。本人も「やりやすい」と言ってましたし、見ていて明らかにやりやすいんだろうとわかります。
後半戦に関しては、7月と8月をどの程度で乗り超えられるかがカギでしょうね。この2カ月で対戦する相手と戦った前半戦の成績は1勝4分4敗で、勝ったのは水戸だけでした。きっちりと調べてはいないんですが、過去3年、レノファは7月と8月を大きく負け越しているはずなんです。なので、この2カ月を前半戦の数字の反対くらい、4勝4分1敗で乗り切ってくれると、ちょっとプレーオフ圏内にいけるんじゃないかという気になりますね。後半戦のカギはそこだと思います。夏の山口市は暑いですしね。
▼後半戦は"工藤壮人選手、山下敬大選手"に注目!
僕は工藤壮人選手に、早く流れの中で点を取ってほしいんですよ。天皇杯(・琉球戦)のように。工藤選手が流れの中で点を取れるようなパス回しを、周りの選手ができるようになれば、必然的に彼の点も増えるし、2列目からの飛び出しも増えるし、工藤選手と同じようなタイプの岸田和人選手も点が取れると思うんです。こうしてパスを回せば、工藤選手にシュートシーンが訪れるという状態を早く作ってほしいな、と。
あと、僕の番組では開幕前に「今年の期待度ナンバー1」ということで、山下敬大選手に話を聞きました。その時に「目標は二桁ゴールって言っちゃえ!」なんて僕が言って、「二桁目指して……、頑張ります……」「二桁取りますって言いなさい!」みたいなやり取りがあって(笑)、いまだに会うたびに「二桁まであと何点だね」なんて話すんですよ。あと2点なので(山下選手は現在8得点を挙げている)、早く二桁得点を達成してほしいなと思います。
トクダ トモヨ ―Tokuda Tomoyo―
ラジオパーソナリティー、MC。2017シーズンからJリーグ公式映像(DAZN)ピッチサイドレポーターを務める。FM山口で毎週金曜放送の「GO! GO! RENOFA!!」の選手インタビュー、タウン情報誌トライアングルの「Inside RENOFA」の取材も手掛ける。防府市在住。
――1、前半戦を振り返って
最初の方は苦しかったですよね。見ていても苦しいし、ピッチでレポートしていても苦しい。今季、Jリーグ公式映像(DAZN)の試合後インタビューで「おめでとうございます」って言えたのは、岐阜戦(第19節)が初めてですからね。それまで私が担当した試合(ホーム戦)は引き分けか負けしかなくて。だからもう……、話を聞きづらかったです(笑)。相当気を使いました。
試合中はレノファと相手チームを中立的な立場で見ているので、普段は至って冷静なのですが、私にとっての開幕戦だった甲府戦(第2節)は大量失点して、さすがに「ああ、もうやめてあげて!」と。2-5で負けた時なんかは「やめてあげて!」ってなりましたよね。
でもレノファのチームの雰囲気自体は悪くなかったから、日頃の取材でそんなに苦しいと感じたことはなかったですね。下位に低迷した一昨年とか、昨年の14試合勝ちなしの時期とかを見ているから、免疫がついているというのもあるかもしれないけど、なんとなく「大丈夫なんだろうな」と思っていました。
水戸戦(第16節)からはすごいですね。水戸はその当時首位だったけど、その次は岐阜、福岡と(その時点では)下位チームとの対戦だったから、選手も言っていましたが、すごい快進撃だけど、昨年の前半戦のようなテンションの高さはないかな。これから強豪と当たっていくとどうなるのか、楽しみですね。
――2、印象に残った試合やベストゴール、取材中のできごと
ベストゴールはやっぱり吉濱遼平選手の、あの(第17節・横浜FC戦の)直接フリーキック。あの時は記者席で、思わず金光一昭さん(エフエム山口のパーソナリティ)とハイタッチしました。あれがターニングポイントというのもあると思いますし、一番覚えているゴールです。
今季は、菊池流帆選手の成長ぶりに驚かされましたよね! 彼は自分のミスで試合に負けるという経験をして、一時はスタメンから外されて、でも水戸戦で久しぶりに先発復帰してゴールを決めた。その後に「GO! GO! RENOFA!!」でインタビューさせてもらって、放送していない部分でもたくさん彼と話をしました。何を話したかというと、サッカーというよりは哲学的な話でした。「結局自分次第だ」とか、「人の悪口は絶対言わないようにしている」とか、これからの生き方とか、菊池選手は若いのにすごいなと思えてすごく面白かったですね。菊池選手に関しては技術的な進化もあるけど、思考が現実化した感じがします。きっとすごく落ち込むこともあったと思うけど、自分で考えて答えを出して成長していく過程を見て、私は22歳の頃にそんなことは一つも思ってなかったよって(笑)、そう思いました。
――3、後半戦で期待したいこと、楽しみなこと
3バックにして距離感が良くなって、選手もやりやすそうですよね。そういう意味では前半戦に[4-3-3]のシステムで負けたチームに、今度は3バックで対戦したらどうなるのかなと思います。前半戦とはきっと違うんじゃないかしら。ただ、システムというのは霜田正浩監督が言うように、ただのシステムでしかないというのがすごく面白いですよね。相手によってストロングポイントを消して、自分たちのストロングポイントを生かすような戦い方がある。レノファのサッカーは面白いですよ、やっぱり。もちろんJ1に上がるために勝点は積まなくちゃいけないけど、コンセプトに忠実に戦って勝ってほしいです。
▼後半戦は"前貴之選手、永石拓海選手"に注目!
個人的には中盤より後ろの選手が好きで、「縁の下の力持ち」的な感じの選手を応援したくなるので、前貴之選手ですかね。前選手だけを見ていても、レノファの試合は面白いんです。いわゆる現代サッカーに必要なスキルやクレバーさがある選手。霜田監督体制になってからは、前選手のクレバーさを生かしてもらえていることを感じますよね。守っている時の前選手もいいけど、攻撃参加して「なんでここにいるの!?」というのがもっと見たい。やっぱりあのブレ球シュートが見たいですよね。
それから、防府市民としては永石拓海選手(防府市出身のゴールキーパー)。やっぱり永石選手に活躍してもらいたいという思いがあります。彼はユニークでとっても面白いし、PKストップが得意と聞いたので、そういうシュートストップに期待したいです。
田辺 久豊 ―Tanabe Hisatoyo―
株式会社ネットウェイズ代表取締役。山口宇部経済新聞編集長。サッカー専門新聞「エルゴラッソ」とJリーグ公式サイトのレノファ山口を担当。本職はITエンジニアという異色のサッカージャーナリスト。
――1、前半戦を振り返って
もどかしい試合が多かったですよね。勝てそうで勝てない試合が続いたり、ちょっとしたミスで失点して勝てなかったり。今シーズンの試合日程が発表された時に「序盤戦は苦労するかもなぁ」という予感はありましたけど、まさかここまで苦労するとは思わなかったです。やっぱり開幕のスタートダッシュって大事なんだなということをあらためて感じましたし、昨年の開幕3連勝って、すごいことだったんだなと。
いろいろありましたけど、システムを変更したことが一番大きかったと思います。昨年の14試合勝利なしの時期と同じような雰囲気になりつつありましたから。結果的に、今のメンバーで最適なシステムがこれなんだと思いますし、前半戦のうちにそこに行きついたことはポジティブに捉えていいんじゃないかな。
昨年は、3バックにしてから失点は減ったけど得点も減りました。でも今年は3バックにしてからも得点が取れている。吉濱遼平選手や佐々木匠選手といった中盤でパスを出せる選手が増えたことが大きいと思うし、そこは昨年と同じ轍を踏まないんだというクラブの姿勢というか、適材適所の補強ができたことを証明していると思います。昨年のやや消極的だったシステム変更とはまったく違うと言っていいと思うし、クラブとしてステップアップしていると感じますね。
――2、印象に残った試合やベストゴール、取材中のできごと
印象に残ったシーンは、アウェイの福岡戦(第20節)の試合後のラインダンスですね。今まで勝ったことがなかった福岡にアウェイで勝って、「ヤマグチ一番」のラインダンスに監督やコーチなどスタッフ全員が入ってサポーターの前で足を上げているのを見て、「いい光景だなぁ」と目頭が熱くなりました。雨の中でみんなびしょ濡れになりながらでしたしね。
試合の内容で言えば、前半戦のラストゲームだった町田戦(第21節)が最も印象的というか、忘れられないですね。霜田正浩監督の理想とする3-0で初めて勝利したという結果もさることながら、試合内容がパーフェクトと言っていいほどの完勝だったので。セカンドボールの激しい奪い合いでも全員が体を張って相手に負けなかったし、サイドに寄る町田に対して面白いようにサイドチェンジが決まって、常に主導権を握って攻撃できましたからね。個人的には現時点での霜田レノファのベストゲームだと思っています。
私と松原純がレノファの担当をしているサッカー専門新聞「エルゴラッソ」は、全国のJリーグのクラブにそれぞれ担当記者がいるんですけど、その仲間たちが「山口はいいサッカーしてるね」とか「ずっと攻撃的なスタイルを貫いているのがいいよね」って言ってくれるんですよ。それはやっぱり誇らしいし、山口で生まれ育った自分の故郷にこういう存在があるというのは本当にうれしいですよね。
――3、後半戦で期待したいこと、楽しみなこと
プレーオフに届くかどうかというギリギリのところを楽しみたいです。6月を負けなしで乗り切って、前半戦のラストで3連勝したことで可能性としてはまだあると思う。でも、ハードルは高い、かなり高い。そのギリギリのところを最後まで楽しみたいというか、楽しませてもらいたいですね。あと、今季こそは得点数でリーグトップになってもらいたい。
前半戦をいい流れで終えて、今季のチームの形もやっと固まってきたので、ここからどこまで巻き返せるか。上位陣をなぎ倒して「台風の目」になってもらいたいですよね。
それと、観客数が増えることに期待したいです。こんなにおもしろいコンテンツが山口にあることを、もっと多くの人に気付いてもらいたい。サッカーの試合ではありますけど、お祭りに参加するような感覚で気軽に行ってみてほしいなと思います。
▼後半戦は"三幸秀稔選手"に注目!
一人だけを挙げるのはなかなか難しいけど、やっぱり主将の三幸選手に注目したいですね。サッカーっていうスポーツは、試合が始まってしまうとピッチの中の選手たちで問題を解決しないといけなくて、そこでリーダーシップを発揮できる選手がいるかいないかはすごく大きいと思います。野球みたいに一球ごと、ワンプレーごとにベンチからの指示を仰ぐわけにはいかないんですよね。だからこそ、チームの司令塔である三幸選手の存在が重要だと思うし、ここからどこまで巻き返せるかは彼の活躍次第だと思っています。