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創立70周年を迎える宇部青年会議所の理事長に就任した松本誠矢さんインタビュー

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創立70周年を迎える宇部青年会議所。
2025年度の理事長に就任した松本誠矢さん(オリエント交通株式会社 専務取締役)に話を聞いた。
(インタビュアー=田辺久豊、インタビュー日=2025年2月3日)

――理事長就任おめでとうございます。就任から1カ月以上たちましたが、いまの心境みたいなものはいかがでしょうか?

昨年6月の総会で理事長候補となり、それ以降は理事長という役職の重みのようなものをひしひしと感じながら過ごしてきました。直前理事長だった波多野嵩三さんには自分にないものがたくさんあったので、自分にやれるのかと不安を感じることもありました。

私は瞬発的な対応みたいなものは苦手な部類で、どちらかというと街のことをじっくり考えたり、課題を解決したりするのが得意なので、自分の持ち味が出せるところで勝負して力を発揮したいという思いでいます。2017(平成29)年に入会してから様々な事業に携わり、何度も最前線に立ってきましたので、その経験を生かしたいと思っています。

――松本理事長が宇部青年会議所に入会した理由やきっかけを教えてください。

社会人になって東京で仕事をしていましたが、父親が「オリエント交通株式会社」を経営しているので、いずれ宇部には帰ってくるつもりでいました。実際に帰ってきて、会社の業務を覚えることは日々少しずつやっていましたが、人脈を作ることがどうしてもできなくて。自分で作っていかないといけないものなのですから、どうしたらいいのか悩んでいたところ、先輩方から「宇部青年会議所という団体があって人脈作りができるよ」と教えてもらい、最初は自分の人脈作りのために門を叩いたという感じでしたね。

――東京で暮らしている時は地元の宇部のことをどう感じていましたか?

私の場合は、東京に行きたくて地元を離れたわけではなかったので、東京に住んでいる時に地元をどうこう思うことはあまりなかったですね。ただ、帰ってきてからギャップをすごく感じたというか、東京は隣に住んでる人が誰かを知らないし、それが当たり前で生活をしていますが、こっちはやっぱり人の付き合いなしでは生きていけないとあらためて感じました。

それを体感したからこそ、宇部に帰ってきて1年も経たずに青年会議所に入会したのだと思います。何をするにしても人と会うし、狭い地域の中で生きているというか、本当に狭いなと思います。だからこそこういう団体に入っていろいろな人とつながり、一緒にこの街を盛り上げるという活動をすごく有意義に感じています。

波多野嵩三直前理事長(右) 写真提供/宇部青年会議所

――約8年活動されてみて、宇部青年会議所はどういう団体だと感じていますか?

現在の会員数は27人ですが、私が入会した時は60人ぐらい所属していました。宇部には「商工会議所青年部」や「若き経営者の会」などいろいろな団体がありますが、約60人が所属する団体というのはおそらくトップクラスだった思います。

入った時に感じたのは、地元への熱い思いのある人がこれだけ集まり、全員で街のために汗をかいているのがすごく格好良いというか、本当に憧れましたね。普段は全然違う業種で働いている人たちが、街のために手を取り合って活動しているのが本当に格好良いと思ってました。 

毎日忙しいのにそれでも自分の時間を削って街のために活動する。眠たい目をこすってでも街のために会議をし、事業を行い、ちょっとでも街が良くなればと動く。自分さえ良ければいいという考えと真逆な人たちが集う団体だなと思っています。最近は自分のことしか考えていないような人が多いというか、自分さえ良ければいい人がすごく増えたような気がしますが、青年会議所という団体はその反対の人たちばかりです。自分たちは二の次で、街のため、人のために自分の時間やお金を惜しまずに活動する人たちが集まっているのがこの団体の素晴らしいところだと思っています。

――それは入会してからずっと変わらずに感じているところですか?

はい、そうです。でも入会した当初は違和感しかなかったですよ。自分を犠牲にしてなんでここまでやってるんだろう、ちょっとおかしいんじゃないかってぐらいに思っていましたけど、でも世の中には自分のことしか考えない人たちがあふれているということに気づかされましたし、青年会議所だからこそ街を良くしていけるのだと思うようになりました。

――その思いを今年は理事長として発信していくことになりますね。

今年は「RISE AS ONE ~まちと共に成長しよう~」というスローガンを掲げました。一体となって立ち上がるという意味もあって、われわれ会員がいま一度同じ気持ちで一緒になって立ち上がろうよという思いを込めました。

理事長所信では「和の心」について触れたのですが、お互いがお互いの気持ちを考えながら行動することって日本独自の本当に素晴らしい文化だと思います。でも、これはたった1人が持つだけでは持続できないことだとも思います。お互いがお互いを思いやりながら世の中が回っていくという「和の心」は、日本人が絶対に持ってるはずの心であり、忘れてはいけないものだと思います。この「和の心」をまずは会員が今一度しっかりと認識し、街のために活動していきたいというのが私の所信になります。

――具体的な施策としてはいかがでしょうか?

今年何をするのかというところでいくと、青年会議所がこの街自体を変えたり、人の心を変えたりするのはたった1年では難しいと思っています。ですが、少しずつでも変わっていけばいいと思っていますので、いろいろな方針を立てています。

まず一つは少なくなった仲間を増やしたいので、今年は会員拡大に注力し、会員を増やすための委員会を作りそこに広報活動を持たせます。宇部青年会議所が何をしてるのかを知ってもらい、そして一緒に活動したいと思ってもらう人を増やす取り組みをする「会員拡大広報委員会」という組織を作らせてもらいました。

それからもう一つ、これは市民向けの事業として考えていますが、個人が街のためになることを大勢でやればすごいことができるというのを市民の皆さんに体感してほしいと思っています。街に活気がないことへの不平不満を口にする人が多くいますが、 口にするのは簡単で、それを行動に移すのはすごく難しい。この街が寂しくなった、人が減った、若者がいないねって言ってる人たちは、言うだけで何もやってないのが現状なので、これをこの事業で変えたいと思っています。不平不満を言うだけではなく、実際に行動に移せるような仕組み作りです。たくさんの人に関わってもらうことになるので、私の1年間で1番大きい事業になると思います。

中心市街地で宇部青年会議所が旗を振ることで、盛り上げるために人が集まり、蓋を開けてみればその日は何万人が集まりしたとなればいい。「文句ばっかり言っても何も変わらんけど、こうやってみんなで協力してやったらこの日は変わったね」っていうのを体感してもらえたらなと。街の変化のきっかけとなるような火種を作るというか、そういう1年にしたいなと思っています。

――いろいろな人を巻き込んで事業を行うことになりそうですね。

いろいろな人がいて、いろいろな考えがあるのでなかなかまとまらないとは思いますが、何か一つ青年会議所が旗を振り、この日はこれで街を盛り上げようよという題材を引っ張ってきて、それで人が集まって何か変わればいいなと思っています。

――青年会議所に入会するとかではなく、まずは関わってもらい、一緒に街を変えていくと。

その通りですね。会員が少なくなったからこそ、そういうやり方がベターではないかなと思っています。やはり青年会議所に入るというのは、一般の人から見たらちょっとハードルが高いイメージがあると思いますけど、その事業単体で関わることはハードルが低いはずです。出店のような形でビジネスとして参加できるのであれば、地元の企業や飲食店さんも一緒になって盛り上げることができるのかなと思っています。

宇部青年会議所2025年1月度例会・定時総会 写真提供/宇部青年会議所

――働き方なども多様化している時代ですからね。

会員が多かった時は、地元の経済も良く回っていた時代だったと思いますが、われわれ青年会議所も生まれ変わらないといけない。時代の変化に適応して変わらないといけない時代にちょうど来てるような気がしています。

――昨年は宇部の花火大会の日に大きなイベントを実施されました。

花火大会だけを楽しんで帰るのではなく、その日はいろいろなことを楽しんでもらいたいという思いで実施しました。それと、「レンチョウをもっと広めたい、知ってほしい」というのもあって、煮付けや唐揚げだけじゃなく、いろいろな食べ方あることを知ってもらうという狙いもありました。

最近はレンチョウが様々なメディアで取り上げられるようになってきているので、その事業の成果はあったと感じています。今後はレンチョウを使った新しい郷土料理が生まれてくればと思いますし、宇部でたくさん水揚げされるレンチョウの注目度が高まれば一次産業にも活気が出ます。若い漁師さんの定着みたいなところにもつながるはずです。

――継続していくことも大事になりますね。

青年会議所は自分たちで事業を行っているのですが、その先につながっていってほしいんですよね。私たちから手が離れた時に、何かを感じた市民の人たちが動いてくれることが事業の成果だと思います。われわれの事業がそういう運動を起こすきっかけになると言われるようになりたいです。

――今年の1番大きな事業としては何を予定されているのですか?

今年は宇部青年会議所の創立70周年という 節目の年になりますので、記念式典と記念事業をやらないといけません。まずは8月30日に「創立70周年記念式典」を開催します。これは70周年を祝う式典として、日頃からお世話になっている関係者の方々を来賓としてお迎えし、70周年を迎えることができたことのご報告をさせていただきます。

9月14日には、先ほどお話しした市民を巻き込んで一緒になって街を盛り上げるような事業を実施する予定です。今年はときわ公園が開園100周年を迎えるので、ときわ公園の魅力をより知ってもらうということを含めて、ときわ公園で何か事業ができないかなと実行委員長が企画を練ってくれています。

それから、エヴァンゲリオンが放映30周年を迎えるということもあるので、宇部市が力を入れている「まちじゅうエヴァンゲリオン」をもっと市民の人と一緒になって盛り上げることができないか、宇部青年会議所の力でもっとなんとかできないかなと思っているところです。

――あとは会員拡大に力を入れる1年になりますね。

そもそも宇部青年会議所を知ってる方が少ないですよね。経営者の方は知ってる方も多いですが、一般市民の方にはほとんど知られていない。「青年会議所に入りませんか」って誘っても、「青年会議所って何するところですか」ってよく言われます。こんなに素晴らしい団体なのに、それをPRできてないことを痛感しているので今年はそのPRに注力したいですし、それが会員のモチベーションにもつながると思っています。

――前向きなエネルギーをつなげて良い循環を作ってきたいですね。

前向きな人たちが一緒にいるから僕も頑張ろうと思いますし、ここは本当にそういうところですよね。自己犠牲を強いてでも何かを得たいという人たちが集まっている。この団体は本当に魅力があると思います。

一般社団法人宇部青年会議所
https://ubejc.com/

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