特集

レノファ山口FC、不屈の主将・河野孝汰の復活ロード 逆境を照らす復帰への軌跡

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大怪我からの復帰、離脱中の葛藤、そして残り試合に懸ける熱い思い。ピッチに立てないもどかしさを抱えながらも、キャプテンとしてチームを支え、自らの復帰に向けて黙々と努力を重ねる河野孝汰選手の知られざるストーリーを紐解く。
(インタビュアー=田辺久豊、インタビュー日=2025年7月19日)
【全2回の第1回】

チームを勝利に導くゴール(2024年7月6日、第23節・鹿児島ユナイテッドFC戦)写真提供/レノファ山口FC

――今の状態、コンディションはどうですか?

自分の中でやりたいプレーのイメージと、実際のプレーというのが少しずつ一致してきた感じがあります。自分が思うような動きができるようになってきた感じです。まだまだコンディションを上げていかないといけないですが、練習に対しての慣れや、スピードへの慣れ、自分のプレーへの慣れというのは、少しずつ掴んできていると思います。

――J2リーグの中断期間、個人としてはどう使いたいと考えていますか?

自分の中ではこの期間をすごくポジティブに捉えています。シーズン中は試合が毎週あるので、こうやって長い期間チームで練習できることはなかなかありません。強度を上げて毎日練習ができるので、コンディションを上げるという意味でも、自分にとってすごく良い期間にしないといけないと思っています。

――今シーズンは、開幕からリハビリに専念することがわかっていた中でキャプテンに指名されました。選手も大幅に入れ替わってチームが新しくなりましたが、開幕するまでのプレシーズン期間はどのように振る舞うことを意識していましたか?

自分のできないことを無理にしたり、背伸びしたりするのはやめようと。でもそれに少しトライしてみたことも正直ありましたけど、プレーできない自分の存在価値はすごく低いんだなというのを実感しました。

今シーズンは新しい選手が多く入りましたけど、自分はピッチで一緒にプレーできないので、自分がどのような行動をした方がいいのかは常に考えながらやっていましたが、正直なところ、何もできなかったなっていうのがあって。やはり早くプレーして自分のエネルギーをチームに還元したいなと。でも、間違いなくピッチを離れているからこそ気づけることはあるし、自分にしかわからないところもあると思っていたので、そういうところは選手とも話すようにしていました。

1試合で2得点をマーク(2024年4月14日、第10節・ザスパ群馬戦)写真提供/レノファ山口FC

――シーズン開幕後も同じような気持ちでここまで過ごしてきたという感じですか?

自分がプレーできなくてもチームに貢献したいという気持ちは常にあります。キャプテンという立場を与えてもらったからには、やはり自分のことだけではダメなので。チームがどういう状況なのかを把握した中で、自分がどのように振る舞うのか。亀くん(亀川諒史選手、もう一人のキャプテン)にしかできない部分もあるはずなので、そこはこれからも意識してやっていきたいと思っています。

――キャプテンになってチーム全体を見るようになったという感覚はありますか?

それは昨シーズンからあります。良さん(志垣良前監督)との話になりますが、「孝汰は周りを巻き込んでいってほしい」と常に言われていて、周りを見てどういう状況でどういう言葉を発信するかは、キャプテンとしてすごく意識していました。

プレーを通して引っ張ることも大事なので、より一層自分のプレーに責任を持つようにもなりました。周りに対して要求したり、盛り上げたりするためにも自分のプレーに集中しないといけないですし、責任を持ってやらないといけないという相乗効果があると思っています。

要求するぶん、自分もやらないといけないというのは、キャプテンになってからすごく変わった部分かなと思います。あえて自分にプレッシャーをかけるではないですけど、自分の集中力がぐっと上がるし、そこは常に意識しているところです。

――志垣前監督の話が出ましたが、今シーズンは監督交代という大きな出来事がありました。シーズン中に監督が変わることは今までも経験されてきたと思いますが、そのことについてはどんな感情がありますか?

昨シーズンから自分をキャプテンに指名していただいて、今までやったことのない経験をさせてもらいましたし、サイドハーフというポジションを経験させてもらったことも含めて、自分のサッカー人生の中で新たなチャレンジをさせてもらいました。期待もしてもらっていただろうし、試合にもたくさん起用していただいていたので、本当に感謝しかないです。

監督交代というのは、できればない方がいいはずですし、こういった状況になったのは今いるスタッフや選手にも責任はあります。監督が変わるのを当たり前に思っていたらそれまでですし、今は1人1人が責任感をさらに強く持ってやっていると思います。良さんが残してくれたものは間違いなくあるはずです。

「レノファ??FC×まちエヴァ」コラボユニフォームでゴール(2024年8月3日、第25節・大分トリニータ戦)写真提供/レノファ山口FC

――昨シーズンを振り返ると、8得点で自己ベストを更新し、大きな飛躍をしている中で9月に怪我をしてしまいました。その時はどうように受け止めましたか?

正直、メンタル的にもショックは大きかったですね。昨シーズンに関して言えば「俺がチームを変えてやりたい」という気持ちが常にあったし、「過去最高の成績を残したい、このチームをJ1に昇格させたい」という思いでやっていた中での怪我だったので、それを受け止めるには時間もかかりました。夏になってチームとしても勢いが落ちていて、少しうまくいってない状況でもあったので、いろいろな状況が重なってショックも大きかったし、かなり落ち込みました。

でも、いろいろな方の支えがあったおかげで前を向けましたし、この経験があったからこそと言えるように頑張ろうという気持ちになれたのも、いろいろな方のおかげだと思っています。

――4年前にはアキレス腱断裂という大きな怪我がありました。2度目の大きな怪我でしたが、自分の中でのメンタルの変化みたいなものは感じましたか?

長期離脱に慣れてはいけないですが、そこへの耐性というか、前回もどん底を味わい、何に対してもエネルギーが湧いてこないようなメンタル的に落ちた状態になりましたが、そこから復活したいという思いになってリハビリをやりました。

今回、前十字靭帯断裂という診断を受けた時から長期離脱になることはわかっていましたけど、なんとかなるだろうという気持ちはあったかもしれないですね。それに慣れてはいけないですし、難しい感情ではありますけど、でも前回のアキレス腱断裂という経験があったからこそ、リハビリに対して自分に合った取り組み方はわかっていたかもしれないですね。

無理に毎日毎日気を張って頑張るのではなくて、もちろん以前よりも強くなって戻るという気持ちはありますが、長期離脱なので毎日毎日うまくいくわけがないです。波がある中で、自分に合った気持ちのままにやろうというメンタリティーでリハビリをするというのはありました。

トレーナーも含めて、チームメイトやスタッフも、自分の顔色やコンディション、その時の状況を見て接し方にも気遣ってもらっていたと思いますし、自分が落ち込まないように明るく接してくれていたので、本当にいろいろな人の協力や支えがあって、毎日モチベーション高く取り組んでこられたと思います。

>>後編(第2回)では、監督交代後のチームの変化や、苦境にあえぐチームを残留に導く覚悟などについて、お届けします。

 

2025年8月11日の第25節・ヴァンフォーレ甲府戦は「全力12,000人プロジェクト」。『夏のみらスタはぶちアツい! 全力祭』と題し、イベント盛りだくさんで開催されます。

https://gameevent.renofa.com/archives/game-event/kofu25-2025/

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