宇部の万倉二ツ道祖(ふたつさや)地区に約260年前から伝わる伝統の「岩戸神楽舞」が12月7日、万倉ふれあいセンター(宇部市西万倉)で披露された。
地元住民により口伝えで継承されてきた「岩戸神楽舞」は、1958(昭和33)年に山口県指定無形民俗文化財に指定されたが、少子高齢化に伴って担い手が不足し、2008(平成20)年を最後に継承が途絶えていた。
2018(平成30)年に地元有志が岩戸神楽舞復興委員会を設立し、県の補助制度を活用して舞の復興の3カ年計画を策定。2020年12月5日の完全復活に向けて活動しており、2年目の成果を見せる「仮上演」という形で披露した。
矢原久登会長は「まだまだ所作や呼吸などレベルは7割程度だが、活動も2年目となり地域外の方々にも多くのご縁をいただいた。その感謝と恩返しの意味も込めて今回は披露させていただいた」と話す。
当日、会場には観客席180席が用意されたが、開場前から行列ができ、開場後には満席となって立ち見客も。主催側の予想を超える盛況ぶりを見せ、用意された「岩戸神楽舞弁当」も完売した。
舞を披露するキャストは、山陽小野田市の団体「ミュージカル山陽ありすの家」の団員のほか、地元住民や市職員などで構成。中学生から後期高齢者まで幅広い年齢層が在籍。衣装製作は宇部フロンティア大付属香川高校生活デザイン科、面はデコクレイクラフト作家・小林安子さんが協力し、和紙は小野和紙が使われるなど地域内に留まらない支援の輪が広がっている。
キャストの木藤花音さん(14)は「地元にこんな伝統があるとは知らなかった。普段やらない足運びや、ゆっくりな動きが難しい」と話す。松井ゆずさん(15)は「最初は1番神楽を行っていたが、今回は鉾の舞に変わった。鉾は重たく腕の筋肉が大変」と継承を担う若者が奮闘する。
神楽舞が披露されると、「天蓋(てんがい)操作」や「鬼の舞」などの見せ場では歓声や拍手が上がった。上演後には「前回の仮上演よりもパワーアップしている」といった感想の声が聞こえた。