企画展「浅田弘幸展 ―― 『眠兎』と中也、そして新作絵本」のII期が11月27日、「中原中也記念館」(山口市湯田温泉1)で始まった。
同展は、中原中也の作品にゆかりのあるアーティストとのコラボレーションを通じて、中也の作品の新たな魅力を探る「コラボレーション企画」の一環で、中也の詩や人生に影響を受けた作品を数多く制作してきた漫画家・浅田弘幸さんの作品を展示する。
9月26日から11月24日までのI期は、浅田さんの初期の代表作「眠兎(みんと)」など、中也に関連した作品を中心に紹介した。同館学芸担当員の池田誠さんは「東京や大阪などの県外からも多くのファンが来館した。サイン会を実施したが、応募多数で定員を増やしたほど」と話す。
浅田さんは「眠兎は20代前半に描いたが、東京の個展でもほとんど展示していない。毎回中也の詩をモチーフにしており、絵と詩を一緒に並べる展示はここでしかできない。中也の詩が入ることで強度が上がり、良い空気が生まれていた」と話す。
同日から始まったII期では、制作中の新作絵本「月夜の浜辺」の一部や制作過程など、浅田さんの画業を紹介する。
全ページ書き下ろしの新作絵本について、浅田さんは「2017(平成29)年頃から企画を進めていたが、発売前の作品を先行して出すことはあまりない。デザインや本にした時の質感などにもこだわり、来年初旬には出来上がる予定。詩をもとに漫画を描くのではなく、中也の書いた詩と私の描いた絵が五分五分のバランスを保つような作品にしたい。子どもから大人まで多くの人に伝わるものにできれば」と話す。
同館と浅田さんの関わりは、2010(平成22)年3月に発行した同館の館報に描き下ろしの一枚絵を寄稿したことから始まったという。「とにかく中也が大好きで、私の出身地で中也の終焉の地でもある神奈川と誕生の地である山口を行き来している。今回の個展に向けては、池田さんから情熱のあるお声をいただいた。館全体でバックアップしていただいて実現でき感無量」と浅田さん。
「1枚1枚手書きで繊細に描き、中也のように来世にも受け継がれる作品を作っていきたい。少年漫画ながらも、心にくる何かを感じてもらえたら」とも。
開館時間は、9時~17時。同展は、来年1月26日まで。月曜(祝日の場合は翌日)、毎月最終火曜、年末年始休館。入館料は、一般=330円、大学生=220円。18歳以下、70歳以上(要証明書)無料。
同展では、「Nishida Coffee」(湯田温泉5)と開発したオリジナル商品「ドリップコーヒー3種セット」のほか、記念コラボマグカップ、グッズ、書籍などを同館で販売する。「中島屋酒造場」(周南市)とコラボした純米吟醸酒などは、同酒造場などで販売する。