宇部市渡辺翁記念会館(宇部市朝日町1)2階ロビーに展示されているピアノを修復するプロジェクト「壊れ果てた名門のグランドピアノを復活させる」が動き始めている。
「このピアノには大きな価値がある」とプロジェクト統括・真部さん
同ピアノは、ドイツ・ハンブルクで1922(大正11)年に製造された「スタインウェイ・アンド・サンズ」社製で、同年に「宇部市立新川尋常小学校」(現・新川小)に寄贈された。寄贈したのは、宇部発展の礎を築いた「沖ノ山炭鉱」(現・宇部興産)創業者の渡邉祐策や、 「宇部曹達工業」(現・セントラル硝子)創業者で後に宇部市長を務めた国吉信義ら20人。
これまで国内外の有名奏者を招いた演奏会で使用された記録が残り、戦時中の空襲では教師らが消化活動にあたり戦火をくぐり抜けてきたが、現在は弦がさび、鍵盤がはがれ、ペダルが壊れるなど損傷が激しい状態になっており、修復には約300万円~500万円掛かるという。
この修復費用を寄付によって集め、同ピアノの復活を音楽文化振興や観光資源に展開することを目的にしている同プロジェクト。今月14日には「宇部の謎 伝説のピアノ復活へ これからはじまるストーリー」と題したシンポジウムを同館で開く。
プロジェクトを統括する真部尚志さんは「なぜ世界最高峰のピアノを宇部に入れたかということが『謎』だが、人材育成や教育に重点を置いていたことなどをうかがい知ることができる。宇部が発展した経緯を音楽の方面からひもといてみたい」と話す。
「まずは宇部にこのピアノがあることを多くの方に知ってもらいたい。宇部のシンボルとして新たな音楽振興につなげ、後にはアーティストなどを呼んでコンサートも行いたい」とも。
シンポジウムは2部制で、1部は渡辺祐策翁の来孫の山本弥生さんや、渡邉奈瑠さんらによるピアノ演奏などのほか、同ピアノがたどってきた歴史を、映像などを交えて紹介。2部は「咲夢音楽祭」と題し、新宅由貴子さんやMAKOTOさん、北谷由美子さんらがコンサートを行う。
開催時間は1部=13時30分~、2部=18時30分~。入場料=500円(ピアノ修復のための寄付金)。問い合わせは「咲夢(さきどり)実行委員会」(sakidoric@gmail.com)まで。