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昭和48年創業 二代目として生きる覚悟 味処 三松

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-取材をお受けいただき、ありがとうございます。こちらは創業から何年になりますか。

1973(昭和48)年7月に開業しましたので42年になります。創業者は父(五十次さん)で、当初は母(妙子さん)と職人さんの3人で切り盛りしていました。当初は1階のみで、席はカウンター席と2~3人が入れる小上がりが2部屋。町の寿司屋という雰囲気でした。現在の総合和食店に切り替えてから20年弱が経ちます。

-三樹夫さんは現在33歳で二代目になるわけですが、これまでの経歴を教えてください。

高校卒業後に大学進学で関西に行きました。ファッションが好きだったので、20~22歳まで京都のセレクトショップでアルバイトをしていたのですが、そこの社長に気に入ってもらってそのまま社員としてバイヤーを任されて4年程働いていました。仕事は順調でしたし、楽しかったですね。

-家業を継ごうという気持ちは元々あったのですか。

料理を作ることは好きだったですが、生業にしようとは一切思っていませんでした。私は長男ですが家を出ていましたし、継ぐという気持ちはありませんでした。

-何がきっかけで「家を継ぐこと」を決心されたのですか。

24歳の時だったと思いますが、母から「店への思い」を涙ながらに聞かされました。普段は気の強い母なので、そんな姿を見るのは初めてでした。「継いでほしい」と言われたわけではないのですが、こんな思いでこれまで店をやってきたのかと感じて心を動かされました。

父からは「今帰ってくれば土台がある中でチャレンジできる。後継ぎがいなくなって店を閉めるのは仕方ないが、それはみんなが幸せなことではないと思う」という話を聞きました。

-なるほど。そこが大きなタイミングとなったのですね。

はい。そこで自分の人生を見つめなおしました。1年近く考えて結論が出たのは25歳の時です。今なら両親もまだ健在で働いていて、腕の良い職人さんもいる。サポートがあるうちに戻って、自分の形を作っていこうと決めました。

-ということは、料理の修業は宇部にUターンしてから始まったのですか。

そうです。最初は皿洗いやトイレ掃除などから始まり、野菜の切り込みをしたり、出汁(だし)を取ったりといった基礎から始めました。1年経った頃に「寿司場に入れ」と言われ、33年間父の横につかれていた職人さんにシャリの握り方や魚の下処理などを教えてもらいました。

形になりそうになってきた頃に「常連さんに握って出してみろ」と父から言われました。その時に出した寿司は1つだけ食べて、後は全部残されて…。ショックでしたね。父は、料理は甘くないということを教えたかったのだと思います。

-そんなことがあったのですね。

一番ショックだったのは、「あの子が握る寿司は食べられないよね」とお客様が言われていることを又聞きしたことですね。このままではいけないと思いました。書物を読んだりネットで調べたり、評判の良い店に実際に食べに行ったりして勉強しました。そんな風にやっていると「ちょっと良くなった」と言ってもらえて。その時はうれしかったですね。料理をもっとやろう、と本気で思うようになっていきました。

私が二代目であるということにも劣等感がありました。同世代で自営業をしている人と話をしても、私の取り方もあるとは思いますが引っかかる感じがあり、料理を頑張るしかないと思いました。料理は奥深く、やればやるほど技術がつき、自分の形が出来てきました。それをお客さまに評価していただけるようにもなり、最近ようやくそういった人たちと仲良くなり、繋がる輪ができたと感じています。褒めていただけることも増え、自信もついてきました。まだまだ浅いのですが、今後も一生懸命やっていきたいです。

-二代目の宿命というか、やはり苦労があったのですね。今はどうですか。仕事の楽しさを感じるのはどんな時ですか。

私は人が好きなので、人のご縁が広がっていくことは楽しいです。店は、接客やサービスで人と関わることができて、お客さんとの接点になってくれます。そして、店の雰囲気を見て、その場を作っている私たちのことが評価されると思います。良い評価をしてもらえるとうれしいので、今はそれが生きがいですね。

-現在のお店のことを聞かせてください。従業員数や席数は。

従業員は8人、アルバイトとパートを含めて12人体制でローテーションして運営しています。父は今経理を担当しており、忙しい時には母もサポート役として手伝ってくれています。接客は妻が行っています。席数はカウンターが5席、1階に26席、2階に36席。総席数は多いのにカウンター席が非常に少ないというちょっと珍しい店です。

-カウンター席が少ないのはなぜですか。

開業時はお寿司屋さんでしたが、今は寿司屋として経営していくのは難しいです。時代の変化に適応しながら、法要や接待、ハレの日などでもご利用いただける店として増築を繰り返しながら割烹料理の店に切り替えてきました。そういった変遷の中でカウンター席は増えることなく少ないままなのです。父が口下手なのもあるとは思いますが(笑)。

寿司屋から割烹料理の店に切り替え始めた頃と違って、最近は法要や接待も随分と減ってきたので、今後は新しい層のお客様にご利用いただけるようにならなければと思っています。

-昔ながらの典型的なお寿司屋さんって最近はほとんどありませんよね。

大手チェーンの回転寿司も多く出店していますし、小規模の寿司屋が残っていくのは非常に難しいと思います。寿司は素材ありきだと思いますが、宇部の現状では良い素材がなかなか集まらない。私は九州や関西の魚も仕入れています。今の人はネタが豊富にある中から好きなものを選びたい、という気持ちがあるでしょうから。

-現在のメーンの料理は何になりますか。

夜は割烹料理とお寿司がメーンです。和食全般を提供することができますので豊富なメニューを提供しています。和食なら、どんな人にでも満足していただけると思います。昼は2000円前後のお昼御膳を提供しています。

-メニューを見ると確かに豊富に提供されていますね。今後はどういった店にしていきたいですか。

日本料理のおいしさを知ってもらいたいです、特に若い世代の人たちに。良い素材を集めて、料理やサービスでしっかりとおもてなしするのが理想です。高級な大衆というか、食通の人だけが来るような店ではなく、遠いようで近い店を目指したいです。

-これまでの客層とは違うところにアプローチするために、何か取り組まれていることなどありますか。

2015年7月に、宇部のレストラン「Noel」さんとコラボしてイベントを開いたのですが、その時は非常に良い反響がありました。私たちのような若い世代にしかできないこともあると思うので、今後も良い案があればやりたいです。

-異業種とのコラボとか、どうでしょう。

そうですね。すぐには思いつかないですが、宇部を楽しい街にしていく力になれればと思っています。私にできることは、どこかの場に出向いて寿司を握るくらいしかないような気もしているのですが、おもしろそうなコラボならぜひやりたいですね。

-今後が楽しみですね。ありがとうございました。

味処 三松
山口県宇部市中央町3丁目6番21号
TEL:0836-32-5025
代表者:店長 中崎三樹夫

味処 三松

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