宇部の画材店「ふじた画房」(宇部市朝日町2、TEL 0836-21-3275)が、今年で創業70周年を迎えた。
同店は1949(昭和24)年、現店主・藤田和子さんの父、栄一さんが創業。1970年ごろには和子さんの夫・八郎さんが後を継ぎ、八郎さんが亡くなった2015年からは、元美術教師の和子さんが店主を務める。
市内では数少ない画材店として、古くから地域の芸術家たちを支えてきた。水彩絵の具やコピックペン、筆などのほか、日本画用の「岩絵具」や彫刻刀など、一般的な文具店ではあまり扱わない商品も多数取りそろえる。作品に合わせたオーダーメードの額縁の製作も行う。
創業者の栄一さんは「自らも油絵をたしなむなど芸術に造詣が深かった」と娘の和子さん。父の影響で自身も幼少期から絵画に親しみ、美術教師となった。元々は文具店として戦後間もない貧しい時代に開業したが、芸術を志す学生たちの要望に応え、画材を専門に取り扱うようになった。
山口市内に出店していたこともあったが、「宇部の本店に集中しよう」と撤退。2004年には本店を改装し、2階に展示室を新設。定期的に展覧会を開催するなど、ギャラリーとしても芸術家たちに愛される。
約40年にわたり勤務する末益幸子さんは「店主と共に店の変遷を見守ってきたが、学校の先生や画家さんなど多くの常連客と長いお付き合いがある。萩市や長門市から来てくださる方もいる」と話す。
オーダーメードの額装は、中に入れる作品のデザインや厚みに合わせて一つ一つ製作する。「特に県美展など作品展があるときは額縁の注文が集中する。1人で20点以上注文する方もいる」と従業員の村谷真理子さん。「最近は皿や着物の帯、染布などをインテリアとして壁に飾るための額装も多い」とも。
同店額縁職人の村谷英昭さんは、昨年開催された額装コンテストの全国大会で大賞を受賞。独創性と技術の高さで、画家や写真家たちにも支持される。「絵画の審査会では、額縁も作品の一部として評価対象になることもある」と村谷さん。同店では昨年からコンピューターを駆使する最新鋭の裁断機も導入し、額装の充実により注力する。「壁に飾りたいものなら何でも対応する」とも。
創業から70年、宇部の街と芸術の変遷を見守り続けてきた同店。4月には市内の画家による展示会を予定する。店主の和子さんは「これからも変わらず、芸術を愛する人たちを支えていきたい」とほほ笑む。
営業時間は9時~18時。日曜定休。