「第29回UBEビエンナーレ（現代日本彫刻展）」が10月2日、宇部ときわ公園で開幕した。

西沢利高さんの作品「ディスタンス」

　1961（昭和36）年に始まり、国内で最も古い歴史を持つ野外彫刻国際コンクール。2年に1度開催されてきたが、コロナの影響で1年延期し3年ぶりの開催となった。

　昨秋に行われた1次審査会では、欧州やアジアなど世界49カ国から応募があった299点のうち40点が入選。実物制作に進んだ15作品を含む模型作品を同ミュージアムイベントホールで展示している。

　10月1日に行った選考委員会で8作品の入賞が決まり、大賞（宇部市賞）には、神奈川県在住の彫刻家・西沢利高さんの作品「ディスタンス」を選んだ。西沢さんは、2015（平成27）年にも同展に出品して山口銀行賞を受賞している。

　西沢さんによると、同作品は高さ約2メートル10センチ、幅1メートル96センチの無色のアクリル板を2つの楕円（だえん）が重なったような彫刻。板が重なった中央部分はねじれており、コロナ禍で変わってしまった人と人との距離感や、すぐそこにあるはずの向こう側の景色がゆがんで見えるもどかしい距離感を表現しているという。

　受賞を受けて、西沢さんは「大賞をいただけるとは思っていなかったので驚きと喜びの気持ちで胸がいっぱい。問題を提起し、新しい距離感の提案ができればとは思っているが、皆さんが見て感じたことや思いが作品の本当の意味だと思っているので、自由な視点で楽しんでもらえれば」と笑顔を見せる。

　セレモニーのあいさつで、篠崎圭二宇部市長は「最終選考委員会に参加し、話題に上ったキーワードはやはり『新型コロナ』」と振り返った。「戦後からの街の復興、まちの景観を良くしたいなどさまざまな社会問題を彫刻で乗り越えていこうと誕生したのがこの彫刻展。宇部市ならではの素晴らしい文化や歴史をこれからも未来につないでいきたい。コロナ禍で人やアートに触れるありがたさを学んだ今、私たちの心に訴えかける彫刻の思いを一人一人楽しんでほしい」とも。

　11月27日までの期間中、同園では受賞作家によるワークショップやスタンプラリーなどのイベントを実施するほか、来年1月9日まで彫刻のライトアップも行う。