第61回「山口県美術展覧会」の審査結果発表が8月21日、県立美術館(山口市亀山町3-1、TEL083-925-7788)で行われ、山口・徳地在住の画家・吉村芳生さん(57)の作品「徳地に住んで見えてくるもの(色鉛筆で描く・・・)」が大賞に輝いた。入賞・入選作品は、23日から9月9日まで同美術館で一般公開される。
「つくる・みる・ささえる」の創造的調和をコンセプトに、創作の枠を決め付けないユニークな公募展として知られる同展。今年度は全国から寄せられた絵画、彫刻、陶芸、空間芸術作品など382点の中から、入賞作品30点(大賞1点、優秀賞5点、佳作24点)、入選作品95点が選ばれた。これら計125点の作品は、昨年度の大賞受賞者・手嶋大輔さん(30)の新作「風ニノッテ」とともに館内に展示される。
鉛筆や色鉛筆を使った緻密かつ繊細な画風で知られる吉村さんは、同展でも数々の入賞歴を持つ実力者でありながら、大賞に選ばれるのは初めてのこと。縦162センチ×ヨコ113センチの100号キャンバス3つを並べた大作のコスモスは、色鉛筆を幾重にも重ねることで生まれる色の深みが、奥行きのある独特のコントラストを生み出している。一つひとつのキャンバスを切り離しても不自然さを感じさせない構図も優れた点だ。
「たくさんある花にもそれぞれに表情や人格がある。この絵から何かを感じ取ってもらえれば」と語る吉村さん。審査員の一人、南嶌宏熊本市現代美術館長は「絵を描くということが芸術表現である前に、生きることと同義の営みであることを思い出させる作品」と評している。
また、優秀賞には、同じく山口市から上野ユリオさん(58)の写真を使った作品「個人情報保護法」、2年連続受賞となる山科君代さん(74)の絵画「みのり 2」、第50回大賞作家・山根秀信さん(47)の絵画「静物(レジ袋)」が入賞した。会期中には、同展を核とするアートプロジェクト「HEART2007」の企画として、今年度入賞者が自作について語るワークショップ、作品搬入から展示までの経過をリポートした写真展示「カタチになるまで」のほか、美術家の倉科有三氏によるワークショップ「もじーる」(9月1日11時~)、「あじのひらき」(9月2日14時~)も行われる。
観覧料は一般250円 、大学生200円で、18歳以下と70歳以上および高校、中学、特別支援学校在学生等は無料。開館時間9時から17時まで(入館は16時30分まで)。月曜休館。ワークショップ「もじーる」「あじのひらき」は要申し込み。
山口県立美術館関連記事 【連載】アートプロジェクト「HEART2007」の鼓動[1]関連記事 【連載】アートプロジェクト「HEART2007」の鼓動[2]関連記事 【連載】アートプロジェクト「HEART2007」の鼓動[3](©マルニ)