特集/コラム

【エリア特集】2007-08-07

【連載】アートプロジェクト「HEART2007」の鼓動[2]
アートを感じる街なかルートが出現

 「HEART2007」の開幕を2週間後に控え、プロジェクト・遊「アート・ルート 一の坂」のワークショップが一足早くスタートした。これは、同美術館と中心商店街を結ぶ一の坂川エリアのルートを、アーティストとの共同作業でアートな遊歩道にしようという企画。8月4日に1回目の「ROUTE102(ルートトーフ)−豆腐を食べて、小径(こみち)をつくろう」、8月5日に「ひもで、せんを、むすぶ。−実物大・一の坂川名所絵図」が行われ、真っ青な夏空の下、市内に住む親子や学生らが参加した。

手作り“豆腐ブロック“が、道という構造物を形成していく

商店街から川へ抜ける路地 プレイベントで7月に行われた「ROUTE102」。豆腐の空きパックでセメントを固めた豆腐柄のブロックをつくり、山口銀行米屋町出張所とみずほ銀行山口支店との間、一の坂川へ抜ける幅1メートル、長さ50メートルの生活道に敷き詰めようという試みがいよいよ始動した。道沿いのブロック塀は、目地をつぶして真っ白に塗装され、何とも不自然な空間を生んでいる。しかし、塀の背を越す庭木の緑や花の色、ブルーの空が鮮やかに映え、これまでも目にしていたはずの景色がまったくの別物に見えるから不思議だ。そんな背景に挟まれて、この日の参加者約20人は、美術家・山根秀信氏のアドバイスを受けながら“豆腐ブロック”を道に並べていく。ブロックとブロックの隙間に砂を入れては固定させていく地道な作業だが、参加者たちは大小さまざまなブロックの組み合わせをパズル感覚で楽しんでいた。“豆腐で道をつくる企画”と聞き、内容をイメージできないままにとりあえず参加してみたという山口大学の学生は「豆腐パックの模様をした豆腐畳の道づくりブロックを見て企画のタイトルに納得した。柄もきれいだし、並べているうちに案外ありそうな道に思えてきた」と感想を話す。ワークショップ初日、道の両端と真ん中、3カ所を基点に始まった道づくりは、まだほんの数メートル。これから9月2日の完成を目指して残り3回、参加親子を募集しながら8月11日、18日、9月1日の午前中に作業が進められる。

赤れんが前庭に巨大なくもの巣出現

紐+結ぶ=巨大なくもの巣 陽ざしのまぶしい翌日曜日、今度はクリエイティブ・スペース赤れんが(C・S赤れんが)の前庭を、何やら白いものを両手いっぱいに抱えた子どもたちがはしゃぎながら駆け回っている。皆の手にあるのは、綿布を裂いた細長い紐。親も子も学生たちも、自分の好きな位置で、好きなように、その紐を結び合わせてはつないでいく。ワークショップのタイトル通り、“ひもで、せんを、むすんで”いるのだ。紐を長く連ねる人もいれば、碁盤の目のように規律正しい形にしていく人、短冊のように垂らしたり、三つ編みにする人もいる。何のルールも、目指す完成図もない。ただ、黙々と、紐という線を結ぶ行為を楽しんでいる。作業開始から1時間後、総勢約30人がつなぎ合わせ、ネット状に広がった紐が宙に持ち上げられた。「ワーッ」と歓声を上げる子、「結構きれい」と感想を漏らす人、それまで地べたにあった紐は白い巨大なくもの巣のオブジェに変身した。参加者の一人、藤川哲さん(39)、詩さん(7)親子は「紐がたくさんつながったら、くもの巣屋敷ができちゃった(詩さん)。目的もなく、下を向いてただ無心に結んでいた紐が持ち上がった瞬間、それまでの景色が一変した。とても新鮮でおもしろかった」と話していた。

川べりを紐でたどりながら探した宝物

橋の下にもアートが潜む この日のワークショップの後半は、C・S赤れんがからお局橋付近までの間、一の坂川沿いの護岸や橋の下を、垂らした紐をつなぎながら散策した。前進するごとに長さを増していく紐には、川べりで見つけたおもしろい景色や特徴的な構造物などをその場で書き込んでいく。水の流れにデコボコしたようなうねりを生む川の石、白色のダンゴムシ、コンクリートが割れて中が丸見えの配水管、古い石碑など、歩く人それぞれが見つけた“宝物”。普段車で走り抜けるだけの橋も、下をくぐると鍾乳洞を連想させるような結晶がぶら下がっていたり、模様のような染みがあったりと、意外なものが見えてくる。川沿いでの発見が書き込まれたこの紐は、「HEART」会紐は名所絵図として展示される期中(8月18日〜9月9日)、美術館の中庭に「実物大・一の坂川名所絵図」として展示される。紐を使ったワークショップの講師を務めた、園田女子短期大学講師で美術家の倉科勇三氏は「結ぶという一つのきっかけで偶然集まった個人が好きに動いただけなのに、結果的に一つの作品ができあがっていく、完成を目指さない共同制作のおもしろさを体験してもらった。日常的に誰もがやっている何気ない“作業”から自然に形が生まれ、それが作品になっていく一つの例でもある」と企画の意図を明かすとともに、「一の坂川を下見で初めて歩いた時、こんなにきれいな水が流れる川が街の中心部にあることに感動した。もっと多くの市民が一の坂川に直に触れ、関心を持つことで、この貴重な財産をもっと生かせるのではないか」と語っていた。

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県立美術館特別企画「HEART2007」・・・8月18日から9月9日にわたって開催される山口県立美術館特別企画「HEART2007」は、“ものづくり”とそこに生まれるコミュニケーションの楽しさ、大切さを、街なかの日常空間でリアルに伝えようとする、同館史上初のプロジェクト。心の中や街の心臓部にはいつも「ART」があるというコンセプトの下、「こころにアート。ここにもアート。」を合言葉に、展覧会やワークショップ、マーケット、上映会といった数々のアートプロジェクト、全12種類22回が中心市街地で繰り広げられる。街にうごめくアートに触れることで、あなたのハートにも何かの変化が起きるかもしれない。

山口県立美術館

関連記事 【連載】アートプロジェクト「HEART2007」の鼓動[1]

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