中原中也記念館(山口市湯田温泉1、TEL 083-932-6430)で11月1日、企画展「中也の父・謙介」が始まった。
昨年、中也の母・フクに着目した企画展を開いた同館。今回は宇部出身の父・謙助に着目。父は長男・中也の文化活動を反対しながらも愛情を注ぎ、息子の文学的業績を見届けないまま1928(昭和3)年に51歳で亡くなった。
同展では、宇部・厚東棚井の農家に生まれた謙助の生い立ちや軍医になるまでの軌跡、中也誕生後の中原医院に関する資料、謙助が中也の作品にもたらしたことなどを、3ジャンルに分けて紹介する。
数が少ないとされる遺品の軍帽子や直筆の書類、中也の作品など当時の資料約30点も展示。軍医学校時代の校長だった森鴎外と親交があったことから、鴎外の書籍も展示する。
同館学芸員の原明子さんは「中也の作品『その頃の生活』には謙助との対話文も登場し、父を『懐かしい』と表現している詩もある。中也に対して厳しいだけではなかったことがうかがえる」と話す。
「謙助はドイツ語を勉強し、当時の最新医療を取り入れるなど明治時代独特の向上心を持った人物だったようだ。勘当などはせずに中也を見守った父・謙助を知ることで、中也の作品の幅を広げてもらえれば」とも。
開館時間は9時~18時。月曜・毎月最終火曜休館。入館料は、一般=310円、大学生=210円、小・中・高生=150円。来年3月24日まで。