山口・湯田温泉旅館組合(山口市湯田温泉5、TEL 083-920-3000)が現在、乳がん手術の傷あとをカバーする「専用入浴着」への理解を求める啓発活動を展開している。
同温泉では今秋のピンクリボン月間から各旅館や大浴場を備える入浴施設など、26施設の女性風呂にポスターの掲示を始め、啓発を行って理解を呼び掛けている。
同組合の瀧下尚子さんは「きっかけは、乳がん手術の傷あとがある女性から掛かってきた1本の電話だった」と振り返る。電話の女性によると、湯田温泉のとある宿泊施設のフロントで専用入浴着の着用を申し出た所、湯船に布を着けることになるため入浴を断られたといい、「湯田温泉でも着用ができるようになれば、また来ます」と話したという。
「もてなす側の意識と知識のなさからそういったことが起きてしまい、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。乳がんへの意識が高まっている中で、専用入浴着を利用しても良いことだけでなく、周囲の利用客にも理解を求めることの必要性を強く感じ、すぐに啓発活動に取り組むことを決めた」と瀧下さん。
旅館経営者が参加する理事会では全員一致で同意が得られ、今では持参した専用入浴着を気兼ねなく使うことができる。きっかけとなった電話をかけた女性からは「着用して温泉を楽しむことができた。ありがとう」と同組合に電話があったという。
瀧下さんは「傷あとを気にして入浴をためらう女性もきっと多いと思うが、安心してお越しいただきたい。温泉は癒やされる場でなければいけない。今後も、どのようなお客さまにも温泉を楽しんでいただける施設づくりとおもてなしをしていきたい」と話す。