宇部市内唯一の銭湯「友恵湯(ともえゆ)」(宇部市明治町2、TEL 0836-21-3998)が7月、60周年を迎えた。
宇部港近くの住宅街に1958(昭和33)年7月にオープンした同店。もともと営業していた銭湯を先代の山下友吉さんが買い受けて店名を変更。町内を中心に地域の家族連れが通う銭湯として親しまれてきた。
「男湯」と「女湯」の扉を開けてのれんをくぐると、友吉さんの一人娘で2代目の澄恵さんが番台で利用客を迎える。年季の入った体重計やソファーが置かれた脱衣所に、タイル張りの風呂と昭和の面影を残す昔ながらの光景が広がる。1983(昭和58)年の6月に導入した「超音波浴槽」と「気泡浴槽」は現役で稼働する。
ピーク時は30軒ほどあったという市内の銭湯も、時代や住宅環境の変化に伴って看板を下ろし、今では同店が市内で最後の銭湯となった。澄恵さんは「最盛期は1960年代だった。毎日子どもの声が響き、いつも満員だった」と目を細める。
澄恵さんは、毎日13時から亀の子たわしを手に掃除を始め、15時ころから湯を沸かして営業に備える。1日の利用客は30人を下回るが、数人の利用客が開店を待っている日も少なくない。銭湯マニアや自転車での長距離旅行者も訪れるという。
これまでを振り返り、「あっという間だった」と澄恵さん。「父が亡くなり経営を引き継いでもう47年。じわじわと客数も減って時代も変わったが、掃除も営業も毎日のこと。特別なことはなかったが、日々お客さんと話すことが今でも楽しみ」とほほ笑む。
店名は、2人の名前から取って友吉さんが名付けた 。「本当によくここまでやってきたなと思う。父が始めたことを守ることができた。私が年をとってもできるようにと始めたのだと思う」と澄恵さん。
澄恵さんは現在74歳。経営は厳しく、後継者はいないという。「お客さまにとっては日常的に通う場所なので営業は止められないが、限界があるのも感じている。60年間は地域の皆さんとのつながり。これからも、できる限りは元気に明るく続けていきたい。まだまだ、地域のコミュニティーの場でありたい」と笑顔を見せる。
営業時間は15時30分~22時。日曜定休。