2008年を最後に途絶えていた宇部・万倉(まぐら)伝統の「岩戸神楽舞」が、4月29日に開かれる「第29回万倉つつじまつり」(会場=万倉ふれあいセンター)で復活上演される。
万倉二ツ道祖(ふたつさや)地区に約260年前から伝わる無形民俗文化財「岩戸神楽舞」は、毎年12月5日の夜、五穀豊穣(ほうじょう)や無病息災を祈って同地区の皇大神宮に奉納されてきた。「神楽舞」「三宝の舞」「天蓋(てんがい)操作」など10種13座から成る一家相伝の技として、地元住民により口伝えで継承されてきたが、少子高齢化に伴い担い手が不足し、2009年以降は奉納できていない。
昨年8月に地元有志が復興委員会(矢原久登会長)を設立し、県の補助制度を活用して舞の復興の3カ年計画を策定。同センターを活動拠点の一つとする山陽小野田市のミュージカル団体「ミュージカル山陽ありすの家」に復興への協力を依頼。今年の「つつじまつり」での公演を「仮上演」と位置付け、本来は約4時間かけて奉納する舞を30分間に短縮して行い、2020年12月までに「本格復活」を目指す。
仮上演に向けて今年1月に練習を開始した「ありすの家」では、メンバー18人が天照大神や鬼、姫役のほか、太鼓や笛など楽器演奏も分担して週に2回の練習に励む。衣装製作やウェブ上でのPR活動には宇部フロンティア大付属香川高の生徒たちも協力する。
姫役を務める地元出身の木藤花音さん(楠中2年)は「お面をかぶるので視野が狭く、ミュージカルのダンスとは全く違う動きで難しい。地域にこのような舞があるとは知らず、新鮮な気持ち。伝統に触れる貴重な体験ができてうれしく、やりがいがある。本番までしっかり仕上げたい」と意気込む。
矢原会長は「天蓋(てんがい)を神楽殿の天井からつるして操る舞は全国的にもかなり珍しく、見応えがある。地域によって特色が違う神楽の魅力を仮上演で伝え、新たな担い手を募りたい。子どもや若い人に、貴重な神楽の経験を通じて見識を広げてほしい」と話す。
つつじまつりでは神楽の上演のほか、万倉小学校児童や地元団体によるステージイベント、フリーマーケットなども予定する。開催時間は9時~16時。問い合わせは、万倉ふれあいセンター(TEL 0836-67-0201)まで。