特集

山口の陶芸文化を世界に発信
合同会社萩焼屋

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-昨年2月にオープンされて約1年半が過ぎました。振り返ってみていかがですか?

昨年10月に、置いている萩焼がより映えるように店内をリニューアルしたので、店が新しくなってちょうど1年になります。毎月テーマを替えてイベントを実施しているのですが、おかげさまで来店されるお客様の数も少しずつ増えている状況です。イベントはホームページも連動して行っています。店舗が住宅街の中にあって分かり難いとは思いますが、こういう店があるんだということを少しずつ知ってもらえているかなと感じています。

-こちらに来店される客層はどんな感じですか?

女性のお客様が多いですが、年齢層は幅広いですよ。店内には約300点の萩焼をそろえています。萩焼の文化を紹介したいという気持ちがあるので、当初はすべての萩焼作家さんの作品を置きたいと思っていました。うちに来れば萩焼のことが何でも分かるような店にしたいなと。ですが、なかなかそうもいかないので、品ぞろえに関しては少し難しさも感じていますね。

-当初から海外展開を視野に入れて起業されました。状況はどうですか?

起業時に補助金を頂くことができたので、この店の準備と並行して海外のギャラリーや美術館、お茶関係の方などのところを回って、海外とのパイプ作りに奔走しました。その甲斐あって12月にロサンゼルスで行われるアートイベントに出店させて頂くことになったので、今はその準備に追われているところです。

海外で「萩焼」のことを紹介するとすごく興味を持ってもらえますし、イベント主催側の人たちからの反応も良いですね。

-それは今後の展開が楽しみですね。今回のインタビューでは、起業された経緯などもお聞きしたいのですが、まず「萩焼」の販売をすることになったきっかけについて教えてください。

僕自身がいろんなところに行くのが好きなので、仕事をしながらいろんなところに行きたいと思ったんです。拠点は山口に置きたかったので、山口のもので世界に発信できるものは何かないかと考えて、行きついたのが「萩焼」でした。

萩焼は知れば知るほど奥が深いというか、「一楽、二萩、三唐津」と言われるほど茶の世界では評価が高いのに、なぜか知名度が低いんですよね。調べてみると、萩焼作家さん自身が自分で作ったものを自分で売り込みをしているような感じだったので、作家さんは作ることに専念してもらって、売り込みなどの営業部分を自分が代わりにやればもっと萩焼のことを知ってもらえるんじゃないかと思ったんです。そこにビジネスチャンスがありそうだと。

海外に向けて考えてみたら、400年以上もの歴史がある「日本の陶芸文化」自体が興味の対象になりますし、その中でまだあまり知られていないけども実は評価が高い「萩焼」を売り込んでいくのは、まだ誰もやっていなくて面白いんじゃないかなと。

-海外だけで事業展開しようとは思わなかったのですか?

やっぱり山口が好きなんですよね。海外にも出ていきたいし、山口も大事にしたいというか、山口の文化を海外に発信したいという気持ちが強いです。

これまでに欧米の美術館を回って日本の陶器を見てきましたが、「有田焼」や「伊万里焼」などは展示されていることが多いのですが、「萩焼」が展示されていることはまずありません。ニューヨークで陶器販売を手掛けている方と話した時に、これまで日本国内のいろいろな産地の陶器を扱ってきたけど、萩焼だけはまだ扱ったことがないという話を聞きました。そういう状況を知るほどに、萩焼のことや、山口のことをもっと知ってもらいたいという気持ちになりますし、おそらく萩焼はこれまで海外に出て行ってなかったと思うので、そこのパイオニアになりたいですね。

この店をオープンする数カ月前に合同会社を設立して、名刺を持って萩焼作家さんのところを何度も回ってきました。もちろん全ての作家さんが受け入れてくれたわけではないですが、歴史のある窯元の当代の次の代がちょうど僕と同じぐらいの世代というところも多くて、そういうところはすごく協力してくれています。ちょうど良いタイミングで始めることが出来たのかなとも思っています。

-板垣さんから見て萩焼の魅力ってどんなところですか?

萩焼は他の産地に比べて低い温度で焼くので、土の触感や質感がすごく残っているんですよね。持った時の手触りとかがちょっと他のものとは違うと思います。

萩焼のルーツは大陸から来ていますが、白磁器が中国などで発明されて以降、世界的に白磁器崇拝の時代になって陶器が廃れて行くのですが、日本だけは茶の湯の文化があった為に陶器が残り、独自の文化として発展を遂げ、現代も続いています。そういう歴史があるので欧米の人には陶器が逆に新しいものとして見えるようです。昨年欧米を回りましたが、いろんなところで「陶芸クラス」が開催されていて、世界的に陶芸が流行りつつあることを実感しました。

-なるほど。欧米の人とっては陶器が逆に新しいというのは意外ですね。海外向けの販売状況はどうですか?

現地で販売するのは今度のイベントが初めてなのでまだ分かりませんが、ネット販売では海外の方が良く売れています。米国のAmazonに2,000点ぐらい出品しているのですが、良く売れています。ここの店内に置いているのはすべて萩焼ですが、海外向けのネットショップは九谷焼などもそろえています。

-今後の展開について聞かせてください。

そうですね。まずは今度のロスでのイベントを成功させたいですし、現地でさらにコネクションを増やしたいですね。ロスに行く前にニューヨークに行くので、ニューヨークのギャラリーなどでもイベント出店できる下地を作って、来年はロスとニューヨークで数回イベントに出たいと思っています。今はアメリカ中心に海外展開を図っていますが、将来的にはパリにも行きたいですね。

国内に関していえば、以前から縁のある有力な実業家に合う予定が近くにあるので、何か大きな動きにつながればと思っているところです。今まではいろんなことを自分一人で何とかやってきて、会社の運営もなるべく一人でやろうと思っていましたが、継続させていくためには人の支援をもらわないとやっていけない部分もあると感じています。今後の課題として、人を巻き込んだりお願いしたりということをしていかないといけないと思っています。

-地元での展開についてはいかがでしょう?

店内でのイベントも今は萩焼だけですが、月の前半は萩焼で月の後半は他の産地の陶器やアーティストさんの作品展示もしてみたいと思っています。異業種とのコラボにも興味はありますが、委託販売という小売り業態なのでなかなか難しいのかなと思ったりもします。でも、いろんな事に挑戦したいと思っているのでぜひ声を掛けてもらいたいです。

今は自分が外に出て山口の文化を広めている立場ですが、将来は外から人を集められるようにしないといけないと思っています。山口が陶芸の街だというイメージを定着させたいですね。

-有難うございました。

■合同会社萩焼屋
山口県宇部市際波西際波台1-5-8
TEL:0836-41-7925
代表者:板垣克昌

合同会社萩焼屋 ホームページfacebookページ

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