発酵食品を手がける「礒金醸造」(山口市阿知須、TEL 0836-65-2012)が5月13日、自家製のこうじを配合したクラフトビール「居蔵(いぐら)クラフト」の販売を始めた。
1911(明治44)年創業で、醸造技術を生かした新商品開発にも力を入れる同社。礒金大樹社長は「みそやしょうゆづくりの根源となる伝統の製法『こうじづくり』を守っていくために、小さな蔵でもなにかできることはないかと模索してきた」と話す。
「ビールはこれまで畑違いなものだと思っていたが、ビールも発酵食品の一つなので自分たちが目指せる食品ではないかと思った。100年以上受け継がれてきた発酵の技で、味の個性が出せるクラフトビールの開発を決めた」と、味の改良を重ねて約1年かけて完成にこぎ着けた。
販売するのは、米こうじと「やすみつ農園」(秋穂)のみかんを使った「ホワイト(ベルジャンホワイト)」と、麦こうじを使った「ルビー(バーレイワイン)」の2種類。価格は1本680円(330ミリリットル)。
ホワイトは「ほのかに酸味があり爽やかでスッキリとしたのど越し」が特長で、ルビーは「芳醇(ほうじゅん)で深いコクが特長で、甘みが強くとろりとした口当たり」という。
ラベルには「居蔵造り」の白壁や瓦ぶき屋根をあしらい、江戸時代中期から明治初期に回船業の港町として栄えた阿知須・浦地区の歴史や街並みを表現した。同社も昔、回船業を営んでいたことがあるという。
現在は島根県内の醸造所に製造を委託しているが、2年以内に自社醸造工場の設立を見据える。礒金社長は「将来的には自社醸造を目指したい。今年中には次の種類の試作も進め、地域性が高く、生産者の思いを込めたものを届けたい。若い世代にも興味を持ってもらい、発酵文化を広げるとともに南部地域を盛り上げることに貢献できれば」と話す。
「こうじは日本人になじみのある味。地元の人に愛される商品となり、地域の新たな特産品になればうれしい。ビールだけでまずは味わってもらい、さまざまな料理と一緒に飲んだり、グラスを変えて喉ごしなどを感じてみたり、自分の楽しみ方を見つけてもらいたい」と笑顔を見せる。
道の駅「きららあじす」や礒金醸造で通年で販売する。