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レノファ山口 三幸秀稔主将「山口には来たことがなかった。レノファがこんなにも地域に密着しているとは」(後編)

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今季の主将としてチームをまとめ、ピッチ上では司令塔として活躍する三幸秀稔選手のロングインタビュー。前編は、リーグ前半戦の振り返りや絶大な信頼を寄せる霜田監督とのエピソードを掲載した。(前編はこちら)

後編は、三幸選手のプライベートでの山口ライフや地域への思い、今後に向けての意気込みなどを掲載する。(インタビュアー=田辺久豊、写真・文=松原純)

今年5月にはチームメイトと「錦帯橋」(岩国市)などを巡り、山口観光を楽しんだ。(写真提供:三幸選手)

――リーグ前半戦ラストの第21節・横浜FC戦は、ホームスタジアムに1万2927人もの観客が入りました。やはり雰囲気はこれまでと違いましたか。

全然違いましたね。熱も入りますし、あんなに多くのお客さんの前で試合ができることがまずうれしいことです。そんな中で勝てずに(試合の結果は0対3で敗戦)自分たちも申し訳ないというか、そういう試合でこそしっかり勝って、みんなと盛り上がらなきゃなって。

試合後にピッチを回ってお客さんに挨拶する時、山口は「頑張れよ!」って声を掛けてくれる人がすごく多いんです。勝っても負けても、そうやって言ってくれる人たちが多いので、勝ってお客さんのところにいかなきゃと常に思っています。

――あれだけの観客が入ると、ピッチ上で指示の声が聞こえないこともありますか?

聞こえないことが多いですね。だからこそ個人戦術も大事になってくると思います。僕たちがそういう状況に慣れて個人戦術のレベルが高くなって、相手チームは逆に声が聞こえないことでうまくいかなくなれば、それはホームのメリットになると思うので、それくらいの準備ができればと思います。

――今季は体のケアに今まで以上に気を使っている選手が多いようですね。

そうですね。僕も自分のコンディションや、次の試合のための準備のことは常に考えていて、「どうやったらこの足の張りが取れるんだろう」とか、「今日は体が重たいな」とか、そういうことは結構気になります。

毎朝体重を計っているんですけど「え?何で今日はこんなに少ないの。昨日何食べたっけ。あ、あれが少なかったな」とか、逆に体重が増えていたら「やっちゃった!チョコ食べ過ぎた!」とか(笑)。体重が増えていた日は、練習が終わってからいつもより多く走らなきゃなって、調整したりしています。

――ストイックになったんですね。

なんか変なスイッチが入ったのかなって(笑)。

――でもそれって、上にいくためには必要なことですよね。

そうだと思います。シモさん(霜田監督)からは、プロサッカー選手として当たり前だと言われます。体脂肪を減らすためにお菓子を我慢しても、シモさんは「それは当たり前です」って。冷温交代浴に入ってケアもしっかりして早く寝て「今日はコンディションバリバリです!どうっすか?」って時も、「サッカー選手として当たり前です」って。そんな感じなんですよね(笑)。

――今季から加入したチーム最年長の坪井慶介選手は、そういった「当たり前」のことをずっと続けてきたんでしょうね。

ツボさん(坪井選手)は本当にすごい。もう、尊敬しかないです。あの人を超える人が果たしているのかと思えるくらい、僕の中では神様です。元日本代表の羽生直剛選手とか、水野晃樹選手とか、いろんなことをやっているストイックな選手を見てきましたけど、ツボさんは本当にブレない人です。38歳で体脂肪率8パーセント台ってどういうことだよって思いますね。ツボさんに聞いたら「ここ10年くらいは、体脂肪率10パーセントを超えたことないかな」って言われて、「えええっ!」みたいな。本当にすごいですよ。

レノファの坪井選手は元日本代表選手で、W杯経験者。練習もケアも手抜きは一切なし。

それでいて、ピリピリしていないというか、人を寄せつけない雰囲気はまったくないんですよ。あれだけ毎日ストイックに取り組んでいるのに、僕みたいな若いヤツが来ても気さくに何でも話してくれて、逆に僕らが「ツボさん、やめてくださいよ!」ってツッコむくらい先頭を切ってふざけてくれるような人です。あんなにいろんなことができる人っているんだなって。

――霜田監督が坪井選手を山口に呼び寄せたのは、若い選手たちのお手本になってもらいたいというのもあるかもしれませんね。

ツボさんはサッカーに対して常に真剣で、一番真面目に向き合っていると思います。だからこそツボさんが練習を休んでいないのに、自分が休んでしまった時の罪悪感は半端なかったです。シモさんが僕のコンディションを考慮してくれて「今日1日だけ休ませるから、必ず今日で体調を整えて明日から合流しろ」って言ってくれた日があったんですけど、パッと見たらツボさんが普通に練習してて、「俺、何やってんだ」って・・・。毎日全力ですからね、ツボさんは。

――三幸選手は今、オフでもあまり気を抜かずに過ごしているんですか?

オフは、寝れるだけ寝て、全力で休養に努めています。次の練習のことを考えて今休んでしっかり栄養を摂っておこうとか、練習で体重が減るだろうからオフで何キロ戻しておこうとか、試合の時にはこのくらいの体重にまでもっていきたいなとか、そんなことを考えていますね。

――オフはあまり体を動かさないようにするんですね。

そうですね。でも2日間オフの時にべったり休んでみたんですけど、オフ明けの練習で思った以上にドカンと疲労がきたので、それからは逆に連休の場合は、2日目には体を動かすようにしました。1日目はダラっとして、2日目に少し動いて、翌日から練習に入って、みたいな・・・。なんかよくわからないスイッチが入ってます、最近は(笑)。

今季は自身の体と向き合う中で、「なんか変なスイッチが入ったのかな(笑)」

――でも、オフをゆっくり過ごすには山口はいい環境かもしれませんね。

いいと思いますよ、サッカーに集中できる環境で。

――ところで三幸選手はレノファに加入する前には山口県を訪れたことがあったのですか?

一回もなかったですね。山口県の土地を踏んだこともありませんでした。通過したこともなかったです。東京から鹿児島まで飛行機で行ったことがあったから、上空は通ったのかな・・・。

――いやいや、東京から鹿児島だと上空は通りませんって(笑)。

上空も通ってないか(笑)。でも、祖父が広島県(廿日市)に住んでいるので手前までは来たことがありましたけどね。

――来るまでは山口県にどんなイメージを持たれていましたか?

本州の端っこの方っていう感じですかね。「JFAアカデミー福島」にいた時に田中陽子(ノジマステラ神奈川相模原に所属する、山口県出身の女子サッカー選手)と一緒だったので、「端っこの方から来てるんだな」って思っていました。そんなイメージがあったので、僕の中では「山口県=田中陽子」でしたね。

三幸選手行きつけのラーメン店「蘭蘭」(山口市)で、田中陽子選手(左手前)らと。(写真提供:三幸選手)

――実際に山口に住んでみて、想像とのギャップを感じたことはありましたか?

まずレノファというサッカーチームがこんなにも地域に密着していて、こんなに知名度があるんだっていうのが最初の驚きでした。練習生として山口県に来た僕も含めて、有名な選手がいるわけではないのに、「まるでスーパースターみたいじゃん。なんだろう、この人気度は!」っていう驚きがありました。

それから人が温かいなと。関東とはまったく違う雰囲気があって、それは今でもどこに行っても感じることですね。初対面なのになんでそんなに良くしてくれるんだろうって思うことが結構あります。

――三幸選手は山口に来て3年目になりますが、山口県内で思い出に残っているスポットはありますか?

角島は衝撃的にキレイでしたね。あとはお世話になっている方に連れていってもらった徳山のフグ料理屋さんのフグが本当においしかったです。そのおいしさもまた衝撃的でしたね。

宇部のときわ公園も「ええっ!」って衝撃がありました。遊園地と動物園がすごくこぢんまりとしてて(笑)。とか言いながら僕もちょこちょこ乗り物に乗って遊んだんですけど(笑)。でもその雰囲気が結構良かったですね。もし自分に子どもがいればかなり自由に遊ばせられるんだろうなって。関東とかで公園に行ったら絶対に親から離れられないじゃないですか。でもあの広大な敷地内だったら自由に遊ばせられるだろうなって。

山口県はほかにも公園が多いし、一つ一つの公園が大きいですよね。「えっ!こんなに水遊びができる公園あるの」ってところも結構ありますし。だから家族で住むんだったら住みやすいだろうなって思います。

――でも、若い選手には刺激が少なかったり、物足りないのではないかと思いますが・・・。

僕は中学・高校を福島県で過ごしましたし、プロになってから住んだ場所も甲府(山梨県)や相模原(神奈川県)で、そんなに都会ではなかったですし、今も都会に飢えているということもないですね。

――そう言ってもらえると安心します。サッカーに集中するにはいいところだとは思うので。

シモさんからもよく言われるんですけど、「プロサッカー選手として今何をすべきか」ということですよね。別に遊んじゃいけない、羽目を外しちゃいけないというわけじゃない。プロとしてグラウンドの上で当たり前のことができるのであれば、しっかりとオンとオフがあっていいと思います。ただ、僕はまだそれができる自信があまりないので、できないんだったらやっちゃだめだなという考え方でいます。

昨季から山口県全19市町がレノファのホームタウンとなった。「遠い市町とももっと交流していくべき」

――今後、レノファをさらに盛り上げるために地域の人たちにお願いしたいこと、または地域を盛り上げるために三幸選手がやっていきたいことはありますか?

僕としてはやっぱりスタジアムにもっと来てもらいたいです。そのためにレノファもいろんなことをしていった方がいいと思うし、子どもたちに「サッカー選手になりたい」と思ってもらえるように、自分たちも頑張らなきゃいけない。公園が多いから外でボールを蹴っている子もよく見掛けるし、そういう子たちがもっとスタジアムに来やすいようにしていけたらと思うので、幼稚園や保育園、小学校訪問などをもっとやっていきたいと思います。

――昨季と比べると、幼稚園・保育園や学校訪問などは、少ない状況でしょうか。

減っていると思いますね。今は結構スケジュールがタイトなのもありますけど、僕はそういうのは別に苦じゃないので、どこかのタイミングで行きたいなと思います。保育園に行って子どもたちに「来てね」って言って、スタジアムで子どもたちが「来たよ」って言ってくれればすごくうれしいですし。

僕たちはスーパースターじゃないので、もっとフレンドリーというか友達感覚というか、「また試合見に来たよ」って気楽に言ってもらえるような感じでいいと思うんです。

試合がある山口市や練習場所になっている山陽小野田市だけじゃなく、山口県内の全市町がレノファのことを応援してくれているんだから、遠い市町とももっと交流していくべきなんじゃないかと思っています。

――そうですよね。J1に上がるためにも観客数をもっと増やさないといけないですよね。

女子中学生や高校生があまり多くないと思うんですよ。年齢層的にはそのお父さんやお母さん、下の世代の子たちが多いのかな。若い子たちがもっと見に来てくれて、みんなでにぎやかにやっていいんじゃないかなって。休日くらい力を抜けるような場所があってもいいと思うので、スタジアムでのイベントもそうだし、どうにかそういうことができたらいいなと思いますね。

――話はサッカーに戻りますが、いよいよリーグの後半戦に突入しました。ここから一番気を付けたいことはなんですか?

後半戦は一度対戦した相手との戦いになります。僕たちも必ず相手を分析しますし、相手も僕たちを分析してくるはずなので、一筋縄ではいかないだろうし、前半戦のようにはいかなくなると思います。

ただ、自分たちがやることは変えないつもりなので、そのクオリティーを上げることと、分析された時にどうするかが一番大事になってくると思います。試合までに必ずそこまでの準備をしないと結果が出てこないと思うので、そこはやらなきゃいけないなと感じています。

――特に前半戦で負けた相手に対しては、強い気持ちでいきたいという思いがありますか?

そうですね。前半戦で負けたチームには勝ちたいと思います。でも、僕たちが(前半戦を終えて)2位にいるということは、僕たちに負けたチームの方が多い。僕たちがそう思うということは(前半戦でレノファに負けた)相手もそう思うはずです。そのメンタリティーで臨んでくるチームに対して、僕たちは「前回勝ったんだ」というメンタリティーではなくて、驕らずに必ず迎え撃てる準備をしてしっかりやっていきたいです。

――貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。後半戦も三幸選手の活躍に期待しています。

はい。ありがとうございました。

山口県への熱い思いを胸に上を目指し続ける。(写真提供:レノファ山口FC)

三幸秀稔-MIYUKI HIDETOSHI-

1993年5月23日生まれ。千葉県出身のサッカー選手で、2016年からレノファ山口FCに在籍。背番号は29番。今季から主将を務め、開幕から全試合フル出場を続けている。視野が広く、ピッチを幅広く使った攻撃的なサッカーを展開し、アンカーの位置では落ち着いた守備も見せている。人当たりがよく、ファンサービスもフレンドリー。