昭和中期に町のケーキ店で定番だった「たぬきケーキ」を、宇部の松月堂製パン(宇部市今村北4、TEL 0836-51-9611)が期間限定で復刻製造する。
かつては全国で作られていたバタークリームを使った「たぬきケーキ」。冷蔵技術が発達して生クリームを使ったケーキが主流になり、作り手が高齢化したこともあって徐々に製造する店が少なくなった。菓子業界では「絶滅危惧種ケーキ」とも呼ばれ、SNSやテレビ番組でも取り上げられて話題になっている。
現在、ネット上には「全国たぬきケーキ生息マップ」というサイトが立ち上がっており、製造している店の情報などが掲載されている。
同社が復刻製造するきっかけは、約1年前に社長室マーケティングディレクターの井上聖子さんが、同サイトに山口県で製造している店の情報が全く載っていないことを知ったこと。「絶滅させたくない一心」で昨年の昭和の日に限定販売。今回が4回目の販売となる。
井上さんは「バタークリームの味わいが懐かしい世代だけでなく、若い世代にも楽しんでもらいたい。レトロブームの中で、昔はこういうのもあったと懐かしんで会話に花を咲かせてもらえれば」と話す。
「たぬきケーキ」は、スポンジケーキの上にバタークリームで顔の形を作り、チョコレートでコーティング。スライスアーモンドで耳を付け、目、鼻、しっぽを付け加えて動物のタヌキを模している。
同社の和洋菓子課の菊池弘司次長は「今から40年前に私がここに就職したての頃に作っていた。時代の流れとともに一度は製造が途絶えたが、レシピと自分の記憶を基にして作り上げた。1個ずつ手間暇かけて手作業で成形するので一つ一つ表情が違うのも特徴」と話す。
今回は、「たぬきケーキとその仲間たち」と銘打ち、5月2日までは「たぬきケーキ」と、緑のチョコレートでコーティングした「緑のたぬきケーキ」(以上302円)を販売し、5月3日からは「たぬきケーキ」と、ホワイトチョコレートでコーティングした「パンダケーキ」(324円)を販売する。
井上さんは「当店のSNSで『昔家族でデパートに行った時に買ってもらった記憶がよみがえってきた』と幼少期の思い出として懐かしんでもらえている声や、『今回捕獲できなかった』といったクスッとしたくなるコメントも頂く。また山から呼ぶので、ひょっこり里に下りてきたときは会いに来てもらいたい」と笑顔を見せる。
同社が山口県内で展開するパン店「カトルセゾン」「レコパン」「ラ・ファリーヌ」「サンプランセス」など12店で販売する。各店数量限定。5月8日まで。