特集/コラム
【ビジネス特集】
フィッティングに情熱を注ぐプロショップ
悩めるゴルファーの“かかりつけ医”に見た職人魂
ゴルフクラブを購入する際、あなたはどういう観点で、どんな店で、どのような選び方をするだろう。いま流行の高価なクラブに憧れ、どの店でどれだけ安く手に入るかを思案し、店の店員に目当ての品を出してもらって会計を済ませ、持ち帰る。確かに、クラブを新調すると気分も軽やか、うれしさに心もわき立つ。だが、そのクラブで思ったような結果が出るかというと、ほとんどがノー。一般に、ゴルファーの約9割が自分に合わないクラブを使用しているといわれる由縁だ。山口・吉敷のマスターズ ゴルフ(山口市吉敷3349-1、TEL083-925-2626)には、さまざまな悩みを抱えたゴルファーが、クラブの不具合を訴えて全国各地からやってくる。手前味噌で探してもなかなか見つからない、自分にぴったりのパートナーを探して。
科学的検知から原因を探り、的確に対応
「引っ掛けが出てどうしても左にばかり飛ぶんです」
クラブを手に重苦しい面持ちでやってきたお客の悩みを聞きながら、フィッティング・スタジオの装置に向かい、すぐさま検診(スイング診断)を始める河村久仁夫社長。「ナイスショット。はい、もう一度お願いします」。打席で実際にボールを打ってもらい、インパクト時のヘッドスピードやボールスピード、飛距離や弾道を測定・シミュレーションするフィッティングシステムの計測データ、スイングの状態などから、多角的に原因を分析していく。併設の工房でヘッドの角度を手早く調整し「これで打ってみて」と客に促す。すると、今度は芯をとらえてボールはまっすぐに飛んでいった。晴れた表情でていねいにお礼を言いながら帰って行くプレーヤー。「打ち方にくせがついていたから、アップライト気味に調整しただけです。フィッティングの結果、クラブではなくスイングに問題が見つかり、簡単なトレーニングとアドバイスを行って、チューニングも買い換えもなく帰っていただくケースもあります」
クラブ選びの絶対条件は自分にフィットしていること
“駆け込み寺”的存在の同店には、広島、福岡などの隣県だけでなく、遠く首都圏からも噂を聞きつけた相談者が訪ねてくる。「こんなに懇切丁寧に、自分に合ったクラブを見つけ出してくれる店はない」というのが、お客の決まり文句。ゴルフ専門店を開業して27年、経験と技術に裏付けされた的確な診断とアドバイスが、口コミファンを自然に開拓していった。
「安いクラブでもパワーのある人なら飛距離が出るし、値段やブランドだけでクラブは決められないもの。自身のスイングにぴったりとフィットしたクラブを選ぶことが何より大事なのです。百人いればクラブも百通り。フィッティングがいかに大事かを知って欲しい」。売りたい商品を客に勧めるのではなく、その人に合った最上のクラブを提供しようとする姿勢。ミズノ認定フィッター(専任診断士)の才覚だけでなく、スイング診断やパターアライメント診断の装置を自ら開発してしまう向上意欲にも頭が下がる。「スコアが上がったという喜びの声を聞くことが一番の楽しみ。趣味は?とたずねられたら、これ以外にないですね」
ゴルフ好きが高じた結果ではなく、職人に目覚めた
物心ついた頃からバイクと車が大好きで、レーシングメカニックに憧れ続けた少年は、バイクレーサーとしてプロを目指すも不慮のケガで夢を断念。四輪界への転身を果たすが、スポンサー企業の不振からまたもレースの道を絶たれてしまった。そんな中、知人が持ってきてくれた就職話は願ってもないものだった。紹介先は、タイヤメーカーの大御所・ダンロップ。期待に胸がふくらんだ。ところが、配属されたのはまったく興味のないゴルフ部門。「はじめはショックでしたよ。自動車メカニックとしての専門技術が身につけられると舞い上がっていましたから。しかし、知ればしるほどゴルフクラブは奥が深くて。ヘッド、シャフト、グリップ、たった3つのパーツからなる単純な造りですが、高級品なら誰が打っても良く飛ぶというわけではないし、パーツの組み合わせも何通りもある。どんどん深みにはまっていきました」。プロゴルファーであっても特別なクラブを使用しているわけではなく、自分のスイングにフィットしたクラブをカスタムオーダーしているだけ。身体能力に合ったクラブを見つけ出せるかどうかが“カギ”なのだという。
フィッティング中心の店づくり
2005年4月、国道9号線沿いから現在地への店舗移転を機に、2打席の試打室に工房を併設したフィッティング・スタジオを開設。奥まった住宅地の一角という、店舗にはイマイチの立地だが、フィッティングでのクラブ選びを何より重視する河村社長にとっては、むしろそれが狙いだった。「商売としてはマイナス要素なのかもしれませんが、じっくりと、時間をかけてフィッティン
グ対応ができる環境を何とか整えたかった。クラブは、使って、結果を出して、初めて価値が出るもの。フィッティング診断の上でご購入いただいたクラブには、万が一調子が悪い場合に無料調整もしくは交換をお約束する「飛び保証」を行っています」。熟練フィッターの自信と責任感、商品に対する思い入れ・・・。魂はまさに職人というべきだろう。「合わないクラブで変なクセがつく前に、特に初心者にはフィッティングを受けていただきたい。良いスコアが出ないと、ゴルフのおもしろ味がないでしょ」と語る河村社長のもとには、今日も悩み多きゴルファーたちが集う。
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