特集/コラム

【ニュース】2007-11-22

井筒屋 独占インタビュー
ちまきやから山口井筒屋へ−核店舗としての新たな決意

 山口・中市商店街の老舗百貨店・ちまきや(山口市中市町)が2008年8月末で撤退、井筒屋(本社=北九州市)が店舗全面を借り受け、同年10月に「山口井筒屋」としてオープンするとの発表から1週間余りが経過した。慣れ親しんだ店がなくなることへの寂しさ、まだ見えぬ今後への不安、そして山口井筒屋への期待…。街にはさまざまな憶測が飛び交い、不安と期待が交錯する。そこで山口経済新聞では、14日の記者会見にも出席した、井筒屋ちまきや担当の有田實執行役員(54)に、井筒屋としての基本姿勢や今後の展望などについて聞いた。

井筒屋ちまきや担当の有田執行役員――有田さんはちまきやと井筒屋の業務提携発表の翌日、9月11日に山口入りして以来、提携委員会の中で営業面における支援にあたってこられましたね。

有田 ちまきやさんの要請に応えるべく、井筒屋より派遣された私を含む幹部3人は、商品、販売、サービス面の一層の強化を図るためにさまざまな支援を検討して参りました。その中で、ちまきやさんだけでなく、山口市や中心商店街の潜在的な力や可能性というものを感じましたし、マーチャンダイジング(MD=消費者の欲求に適合する商品を適正な数量・価格で適切な時期・場所に供給する企業活動)の充実によって増収も見込めるとの考えから、ちまきやさんより申し入れのあった店舗の全面賃貸に関する基本合意に至ったわけです。

――改正中心市街地活性化法(中活法)の施行を受け、山口市が早期にまとめた中心市街地活性化基本計画が国に認定されたことも、進出を決めるポイントになったのでしょうか?

有田 もちろんそうですね。我々も出店にあたりいろいろな角度から調査をし、山口のポテンシャルを感じていますが、MDだけが変わって経営が良くなるとは考えていません。人員削減ではなく、ある程度の売上増を目標にした中での展開を考えたいと思っています。そういった意味でも、中活法に基づく中心商店街の整備は非常に重要なファクターといえます。駐車場問題にいたしましても、中活の中で討議され、改善されることに期待しておりますし、それが大きな起爆剤になるということは重々認識しています。ただし、それまでにも我々がすべきことはあると思いますし、こちらの取り組みと中活の計画とで合致する部分が出てくれば、大変ありがたいことです。

――全国的に見ても、百貨店業界は厳しい状況にありますが、山口に進出されるにあたってはどこに力点を置かれるのでしょう?

有田 北九州の本店や、東京・大阪で流行っているものをベースにするのではなくて、やはりこの地域の皆さんが望まれているニーズというものをどれだけ汲み取っていけるのかが重要だと考えます。それについては今後、マスマーケティングなども行っていきながら、街の方たちの直接の声をお聞きする機会も増やしていきたいと思っています。また、山口井筒屋が中心市街地の核店舗になると言いつつも、2万平方メートルの店舗で地域の皆さんのニーズをすべて満足させられるわけではありません。そういった意味でも、中心商店街の皆さんとは、ぜひともさまざまな形で協力や連携をしていきたい。よそから出店してきてこの言葉を最初に出すのは非常に口はばたいですが、地域に密着した百貨店を目指したいと。街の皆さんとのコミュニケーション、そして商店街の皆さんとのコミュニケーションを高めていき、出店してもらって良かったと喜んでいただけるような店舗になりたいと思っています。

――北九州の本店も地元商店街の中にありますが、何か具体的な連携はされていますか?

 北九州商工会議所さんらと一緒に「北九州まちづくり応援団株式会社」という法人組織を立ち上げ、地域の活性化に取り組んでいます。そこでは、小倉北区のリバーウォークから井筒屋、商店街、駅前などを一体的にとらえ、地域イベントを始めとするさまざまなソフト事業を行っています。人口百万規模とは言いつつも、やはり博多という都市も近くにありますし、北九州空港ができて利便性が向上した反面、東京や大阪などとの競合ということも意識するようになりました。自分たちが生き残るには、街自体の活性化が欠かせないということです。黒崎のそごうさんが撤退された後にも我々が出店いたしましたけれども、当時の黒崎の街は、ダイエーがなくなり、長崎屋がなくなり、そしてそごうがなくなりと、どんどんにぎわいから遠ざかっておりました。そんな中で、我々がまず黒崎井筒屋の移転増床の際に掲げたのは「ご一緒に」という言葉です。その「ご一緒に」に秘めた思いは、まさに今回の山口井筒屋の出店のコンセプトと同じなのです。要するに、街の皆さんと、商店街の皆さんと、どれだけ“ご一緒に”やれるのかということなのです。山口井筒屋が単に来秋オープンするというだけではなくて、これを機会に、商店街の皆さんと一緒になって中心市街地の活性化に新たな一ページを加えられればと願っています。山口井筒屋の開店にあたりましては、地域の方々にご活用いただけるようなスペースなども許せる範囲内で考えていきたいと思っております。

――郊外の大型商業施設との差別化という点についてはどうお考えですか?

有田 郊外型商業施設の専門店さんも顧客管理はもう十分にされていると思いますし、今のお客様のニーズにどう応え、満足していただけるかということに尽きるのではないでしょうか。やはりお買い物というのは欲しいものが手に入るだけではなくて、プラスアルファ、つまり今まで知らなかったものに出会う、経験するといった情報性の高さによって、初めて満たされるものだと思うのです。それこそが百貨店の機能なのではないかと。単に通り一辺倒な都会のブランドを並べただけではだめだとも思っています。そうなってくると、やはり大事なのは接客です。小売業、中でも百貨店業というのは特に対面販売が基本になりますので、「人」がとても重要だと考えております。お客様の満足度を高めるベースになるのは、従業員の資質と充実度。顧客満足と同時に従業員満足をどれだけ高められるのかというのがテーマだと思います。

――雇用についてはいかがでしょう?

有田 事実、ちまきやさんは廃業なさるので、今働いていらっしゃる方はそこでいったん解雇という話にはなりますけれども、それは会社がなくなるということでの解雇であって、地域密着を目指す山口井筒屋としては、これまで働いてこられた方々をベースとして総体的に組織を組み立てていこうと考えています。しかしながらそれは、店舗も人も変わらず、単に看板が変わっただけというのでは今まで以上のご期待には添えないと思いますので、MDを変化させると同時に、従業員の業務フローなどは変えていきます。我々が重要視しているのは、継続的な、また職階に応じた教育研修みたいなもので、一人ひとりが持つ基本的な能力を訓練によってさらに高め、全体的なマインドをどう創っていくかです。従業員満足というのは、その会社に勤めているプライドだとか、やりがいだとかによっても得られるものだと思いますので。井筒屋のやり方をご理解いただいた上で、従業員の皆さんが能力アップでき、やりがいを感じられるような職場にしたいですね。

――これまでの支援をベースにしながら、今度は井筒屋さんとしての組織づくりを一から始められるわけですね。

 今月中に準備室を立ち上げて、より細かな検討に入っていきます。結局は会社が変わるわけですから、非常に細かいことを言えば、伝票一枚の流れから物流の問題、朝礼の仕方まで変わってくるということです。見た目が大きく変わるということもあれば、仕事のやり方から非常に小さなことまですべて。そういった部分の環境をうまく整えていくことが、私どもの大きな使命だと思っております。ただし、ちまきやさんの良い部分もたくさんありますので、そういう部分は残していきたいですね。ちまきやさんでは幹部の方が毎朝8時45分くらいから店舗周辺を掃除して回られています。それは非常に良いことですので、我々も一緒に掃除に参加させていただいています。

――ちまきやとは10年の賃貸契約を結ばれていますが、採算ベースに乗らなかった場合には早期撤退もあるのではという街の声もあります。そういう声に対してはいかがですか?

有田 経済原則が働く10年後がどうなっているのかは現段階ではわかりませんけれども、我々は10年後、開店時よりもますます力をつけているという状況を必ず実現すべく出店するわけですし、山口井筒屋としてこの地で商売をさせていただく以上、早期撤退は絶対に考えられません。オープンにあたっては、全館レベルのリニューアルを視野に入れ、数億円の投資もいたします。特に地下や1階という低層階については、全面に近い形で改装を行う予定です。

――宇部には支店もありますが、山口井筒屋の商圏は?

有田 まずは足元の山口市です。北九州、博多、広島のデパートにはるばるお買物に行かれる方も多いように感じます。それを完全に止めるというのはなかなか難しいかもしれませんが、そこまでコストをおかけにならなくても、中心商店街全体で満足していただける商品をお届けできればと思います。また、市外であれば萩、防府、阿東、津和野という南北の導線を意識しています。ただしそうなりますと、そういう方面からのお客様が市内に入ってこられたときの駐車場へのアクセスや案内などを整備する必要があります。このあたりも、商店街の皆さんと一緒に検討していければと思います。

――ところで、有田さんは下関の長府ご出身だそうですね。

有田 ええ。長府にずっと住んでいますが、この9月から山口市に移り、やはり県庁所在地、山口県の中心なんだといろんな局面で感じますし、文化度や歴史観も下関とは違う奥深さがあります。そして何より、山口市というところはとても住みやすく、好きになりまして。うちの妻もすっかりこちらに居着いてしまって。東京に子どもが行っているのですが、この間なんか子どもに「ちゃんと下関に帰れるようにしといてよ」と釘を刺されてしまいました。山口市という環境にもプラスとなる店舗を、皆さんと一緒につくっていきたいですね。

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ちまきや

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