特集/コラム
【ビジネス特集】
異彩を放つ大規模文具店
クロスランド山口 成功のカギ
山口・泉町に05年9月にオープンした「クロスランド山口」は、売り場面積約800平方メートル、平均でも常時35,000アイテムを取りそろえる、県内最大級のステーショナリー専門店。商圏人口の限られた地方で、文具とインテリア雑貨のみを扱って、それもディスカウントなしで、これだけの規模を維持しながら好調に売り上げを伸ばすにはそれ相応の秘密がある。そのカギを握る今本逸郎営業本部長(35)が明かしてくれた、独自の戦略をレポートする。
■全国にも類を見ない徹底したデータ管理
事務所のパソコン画面を流れるようにスライドしていく商品データ。製造メーカー、アイテム名、カラー、購入客、仕入れや在庫数量だけでなく日々の商品の動きまで、店内で取り扱う全アイテムの情報が単品ごとに、独自のシステムで徹底管理されている。店頭の売り場を確認せずとも、レジを通過した商品の情報はオンラインの管理システムに即座に転送され、商品履歴を分析した上でリスクの少ない的確な仕入れを実現。事務所にいながらアイテムごとの販売状況や顧客の動向が手に取るようにわかってしまう優れものだ。このシステムに着目し、わざわざ視察に訪れる県外大手企業も数知れない。「これだけのアイテムを全スタッフが把握するにはちょっと無理がありますよね。私でも難しいくらいですから。そこでまず、商品知識をデータ化して共有しようと考えたんです。そうすることで、お客様がどのスタッフに商品を問い合わせても対応できるようになりました。また、お客様の情報が登録されていれば、本体を持たずにレフィルを探しに来られたような場合でも、本体購入時のデータからお求めの商品を探し当てることも可能です。データ管理の徹底は、経営の効率化以外にも多くの利点を生んでくれるんですよ」。フル稼働のこのシステムには、新しい機能を追加するなど随時更新の手が加えられており、現在も進化を続けているという。
■失敗に学ぶ改善の繰り返しが結果に
ただし、最初からすべてが完璧だったわけではない。クロスランド山口は、今本さんの実家である山陽小野田市の老舗文具店・十字屋の3号店。家業を継ぐため10年前にUターンした今本さんは、文具屋の生き残りをかけて2000年11月に2号店「クロスランド下関」を開店。600平方メートルもの売り場を持つ大型文具専門店の出店は県内でも初めてのことで、当初はかなりの苦労があったようだ。「不況のまっただ中でしたからね。オープンはしたものの、未踏の地は情報が少なく、お客様の好みもわかりませんでしたし、商品の管理も行き届かなくて。売り上げも上がらず、落ち着くまでには2、3年かかりましたよ。思い出すのも辛いですね」と当時を振り返る今本さん。暗中模索の中で、売れるもの、売れないもの、ユーザーの好みを知る手段として目をつけたのが、商品の動きを常に把握できるデータ管理だった。システムを運用しながら、店の問題点や顧客からのクレームなどがあがるたびにデータを分析し、システムの改良を重ね、年月をかけて培った結果が今につながっている。「万全の態勢で臨んだ山口店のオープンは、下関店のリベンジの意味もありました。お客様のその店に対する評価は、第一印象で決まると言っても過言ではありません。スタートはやり直せませんから」と今本さんは語る。
■責任を怠らないプロフェッショナルの姿勢
クロスランドでもう一つ忘れてならないのは、ディスカウントをしない点。季節のセールも一切なし。価格に対するこだわりは、今本さんに投げかけられた「安く売るのは最後の手段。ものの価値に見合った定価がついているのに、最初から値を下げるなんて作り手に失礼だと思いませんか」という言葉からもうかがえる。「独自性のある商品をセレクトしているのも確かですが、その商品が高いか安いかの判断は、人によって違いますよね。いくら定価と売価が離れていてお得感があっても、必要のないほど大容量の特価300円の商品と、品質が同じで必要量の定価250円の商品、あなたならどちらを選びますか? 当店では同じ製品をフルラインアップで並べ、
選択肢を広げることで値頃感を出しています。同規格商品の山積みバーゲンよりも、たくさんの種類の中から自分に合ったものを選べる方が、定価であってもお客様に親切だと考えますから。それにプロフェッショナルとして、本当に気に入っていただけて、長く大切に使ってもらえる商品を提供できることで付加価値をつけたい。ここで購入していただいた商品には最後まで責任を持ちます」
■顧客の視点をすべての基準に
また今本さんは「商品には回転率の良いものと悪いものとがありますが、回転が悪くても、その商品に1人でもファンがいる限りは、メーカーが製造を中止するまで店頭に並べ続けています。もちろんレフィルも。売りっぱなしは専門店として失格」とも。本体を買えば、いずれレフィルが必要になる。顧客がお気に入りのアイテムをずっと使い続けられるよう特に配慮しているのだ。そういった細やかな気配りができるのも、日々のデータ管理の賜物だろう。「仕入れるべき商品はデータが教えてくれています。どういう人がどんな商品を求め、どれくらい必要としているのかは、データの分析から予想できますから。商品の動向からお客様のニーズの動きもつかめますし、データをお客様の声と言い換えても良いくらいです」と話す今本さんは、自分の好みを一切排除して、顧客の声に応えることに重きを置いた売り場づくりに徹する。クレームやトラブルは即改善する潔い姿勢。より良いものを追求し続ける向上心。経営者でなくとも、今本さんに学ぶべきことは多い。
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